昭和女子大学理事長・総長であり、社会変革推進財団(SIIF)理事長でもある坂東眞理子さん。元官僚としても、さまざまな女性施策に携わってきました。男性社会で道を切り拓いてきたキャリアの先駆者としてARIA読者の大先輩でもある坂東さんに、今の日本を取り巻く社会的課題や、これからの組織のあり方、女性の働き方について聞きました。

(上)ジェンダー・ギャップ指数が示す日本の遅さ
(下)21世紀型組織は「フェイルファスト」であれ ←今回はココ

「共感できる目標」が組織の強みになる

―― これまで官民それぞれの立場で女性のリーダーとして、革新的な取り組みに挑戦をされてきましたが、前例のない取り組みを成功させる組織のあり方についてどう考えていらっしゃいますか?

坂東眞理子さん(以下、敬称略) 私が今、理事長をしている社会変革推進財団(SIIF)も2019年10月に社会的投資推進財団(旧SIIF)と社会変革推進機構(旧IASI)が合併して新たな組織になったところです。それぞれ元の組織の強みを生かして、有機的に社会的課題解決を支援していきたいと思っています。

 過去を振り返ると、20世紀型組織は「予算を持っている」「有能な人材をたくさん抱えている」「権限がある」のが強みでした。でも新しい組織はそういったものを持たないことのほうが多いですよね。

行政官、2児の母親として40代50代を走り抜けてきた坂東さん。自身の経験を生かし、70代になった今も女性の働き方や生き方についてさまざまなサポートを行っている
行政官、2児の母親として40代50代を走り抜けてきた坂東さん。自身の経験を生かし、70代になった今も女性の働き方や生き方についてさまざまなサポートを行っている

坂東 では、21世紀型の新しい組織に必要なことは何か。第1は「明確な目標がある」ことです。さらに、その目標に対してみんなが「共感できる」こと。これは組織の大きな強みになります。組織の中だけでなく、組織の外からも共感され理解されれば、周りにサポートしてくれるネットワークができていきます。目標が共有され、組織のレピュテーション(評判)が高まればソフトなサポートの輪が広がるのです。

 もう一つは新しい情報がどんどん入ってくる組織であること。古い組織は風通しが悪くなり、新しい情報が入ってこないことが多い。この2つが備わった組織であれば、お金や人が少なくても、ニーズに応える動きができるようになります。