「やればできる」という自己肯定感を高めるマインドセット

坂東 もちろんブルーオーシャンには雨も降れば風も吹きます。プログラムは世界初のアップサイドSIB(税収の増加を評価軸とした成果連動型の官民連携手法)を取り、民間の投資を呼びこみながらシングルマザーの起業を一から支援します。特にSIIFがなすべきは、資金提供だけでなく伴走型の支援です。起業スキルの支援はもちろん、モラルサポートやメンタリングなど、プロフェッショナルサポートで起業の成功率を高めていくことを考えています。ビジネスを遂行していくために必要な、資金面以外のサポートもできることは財団の一番の強みです。

―― モラルサポートやメンタリングではどんなことを重視していますか?

坂東 特に子どもを持つ女性はつい安定を求めがちですから、起業のリスクを取れるマインドセットをサポートしていきたいと思っています。いくつかの国際調査をみると、中国やアメリカに比べ日本人は自己肯定感が低いことが指摘されます。日本の中でも男女を比べるとさらに女性の方が自己肯定感が低い。だからこそ、「やればできる」というマインドセットはとても大事なことだと考えています。

 それともう一つ、女性は社会的な意義や人との連帯といったことに価値を感じる人が多い傾向にあります。ユニコーンを目指す起業家に比べると甘いと言われてしまうかもしれませんが、「人を幸せにする仕事をして自分も幸せになる」という考え方も大事にしていきたいのです。「幸せな職場」で「幸せな社会」を作るための活動。それを応援する財団であれば幸せだと思います。

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取材・文/竹下順子(日経ARIA編集部) 写真/花井智子


坂東眞理子
昭和女子大学理事長・総長
ばんどう・まりこ/東京大学卒業後、総理府に入省。1980年よりハーバード大学に留学。埼玉県副知事、在オーストラリア・ブリスベン総領事、総理府男女共同参画室長、内閣府初代男女共同参画局長を務め退官。2007年、昭和女子大学学長に就任し、2016年より現職。2018年、社会変革推進財団(SIIF)理事長に就任。著書『女性の品格』(PHP新書)が話題に。2019年には『70歳のたしなみ』(小学館)が20万部のベストセラーに。