人生には思いもよらぬことが起きるもの。肩の力を抜いて柔軟に「私の生き方」を見つけていこう――。先輩たちが半生を振り返って贈る、珠玉のメッセージ。日経WOMANの看板リレー連載を、日経ARIA読者にお届けします。ゴールドマン・サックス証券副会長のキャシー・松井さんは、闘病を経験して「大切にしたいこと」が変わりました。今よりもっと女性が活躍する社会を実現するには、世間の固定観念を変えると同時に、女性自身の意識改革も不可欠だ、とエールを送ります。

(1)移民の両親から学んだこと
(2)34歳でウーマノミクスの母に
(3)乳がんサバイバーの恩返し  ←今回はココ 

 人生には予想もできないことが起こります。そして、困難に直面して初めて分かることがある。36歳で乳がんを患い、闘病したことで、私の“大切にしたいこと”にも変化がありました。

 それまで以上に、家族と過ごす時間を持つようになりました。朝は子どもをバス停まで送り、夕食もなるべく一緒に。長女とは料理を楽しんだりして。節目の学校行事には必ず参加しましたが、それでも仕事で行けないことがあると、娘からは「寂しい」とよく言われました。友達の専業主婦のお母さんと比べて、「なぜうちのママはこんなに仕事しているの?」と思っていたようです。確かに、家でもヘッドホンを着けて、ニューヨークやロンドンとつないでの電話会議をしながら子どもをお風呂に入れることもよくありましたから、そう思われても仕方ありません。

仕事も子育てもどちらも大切にしたい

 仕事と子育てとのバランスは全く取れていなかったと思います。一方を優先すると、もう一方が犠牲になる。子供に対しては常に罪悪感がありましたが、仕事も子育てもどちらも大切にしたいこと。バランスを取るよりも、自分なりに日々を乗り越えるのに精いっぱいでした。

「自分なりに日々を乗り越えるのに精いっぱいでした」

 病気を経験して、子育ての考え方も変わりました。私はそれまで、「いい教育を受け、いい会社に入り、結婚して、家族をつくることがいい人生」だと信じ、自分の子どもにもそうしてほしいと思っていました。でも、何がいい人生かは人それぞれ。今、子どもたちには、「自分のやりたいことを学びなさい。そして何かひとつ、自分が生まれた時よりもいい世の中になるようなことをしなさい」と伝えています。