息子の自立、母は施設へ 再び自分に向き合った

野田 力むことをやめてからは氷が解けるように、物事が好転していったように思います。既に人様の手を借りないと生活ができない母は施設へ。時を同じくして、息子が「デザインの勉強がしたい、東京の専門学校へ行きたい」と言いだしました。フリースクールで好きなことに向き合う中で見つけた得意分野だったようです。自立を応援したいと送り出しました。ほっとすると同時に、いきなり一人ぼっちになってしまい寂しさも感じました。

―― 一人になって自分と向き合ったことで、ご自身の経験を踏まえて、「色のチカラ」について改めて考えるようになったのですよね。

野田 母と息子の世話をするというやりがいがなくなり、ふと気付いたんですね。「これまで『色』で心を豊かに、と人様に提唱しながら自分がこれではダメだな」と。自分が求めていたのはより実生活に密着した、具体的な解決策でした。気慰めのコンサルテーションではなく、自分の実体験から人の気持ちに寄り添い、クライアントが自分自身で解決策を見つけだせるように導くための手立てを、色で提供したい。そう思い至ったんです。

 振り返ってみれば不登校の息子に必要だったのは「私はあなたのことをこんなに思っている」という愛情の推し付けではなく、「そこにいていいんだよ」「あなたを尊重します」という安心感でした。大切なのは安心、安全な心持ちを確保した上で自分の心のありようをその人自身が認識できるようにすること。カラーリアムとは「Color I am 、私自身が色」。その人自身の「色」を輝かせたいという思いを込めました。私自身の経験とこれまでの色の知識を「凝縮」した、色彩心理実践法です。

※次回は記者が実際にカラーリアムを体験します。

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野田さちこ 記者が「カラーリアム」を体験してみた

取材・文/砂塚美穂 撮影/花井智子

野田さちこ
野田さちこ IMA代表取締役。色彩療法「オーラソーマ」を日本に導入した第一人者。イギリスに本校のあるASIACT初代日本代表を20年間務める。色彩に関する企業研修をはじめ、商品開発、コンサルタント養成など活動は多岐にわたり現在に至る。