人生のピンチに陥ったときに、局面を打開するきっかけになった「逆転の一冊」を聞くリレー連載。第6回は東京新聞の記者・望月衣塑子さんの虎の子の一冊です。官邸の記者会見で鋭い質問をぶつけ続ける姿が印象的な望月さん。高校時代から人生の「常備薬」的存在だという一冊を読んだきっかけは、意外なものでした。

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(下)「それでも、私は問い続ける」

母が導いてくれた、新聞記者への道

―― 望月さんの著書『新聞記者』を原案とした同名映画(主演シム・ウンギョン、松坂桃李)が観客動員数44万人を突破するなど、ロングランヒットになっています。望月さんご自身、子どもの頃は舞台女優を目指されたことがあったとか?

望月衣塑子さん(以下、敬称略) 母が小劇団の演劇にはまっていて、よく連れられてお芝居を見ていたんです。母自身も小さな劇団に所属していたのですが、演劇の面白さを私にも体験させたかったのでしょう。勧められて私も児童劇団に入りました。小学校6年生のときにミュージカル劇の『アニー』を演じたことがあって、表現することの面白さを知り、将来は舞台女優になりたい、と思っていましたね。

 けれども中学生のとき、やはり母に、フォトジャーナリストの吉田ルイ子さんの『南ア・アパルトヘイト共和国』(大月書店)という本を薦められ、読んで衝撃を受けました。吉田さんのジャーナリストとしての言葉に強く引きつけられ、お芝居の世界ではなく、現実の世界で苦しみ、大変な状況にある人たちに光を当てて伝えていく仕事がしたい、と強く憧れました。そのときから、将来は絶対に新聞記者になる、と決めました。勉強も、就職活動も大変でしたけど、絶対に記者になると思っていたし、自分ではそれほどつらいと思ったことはなかったですね。

 むしろ10代のころ一番つらかったのは……、恋愛の悩みだったかもしれない(笑)

森友・加計問題をめぐる報道が過熱していた頃から、官邸での定例会見に参加している望月さん。2児を育てる母でもある