裏切り、病気、孤独、死別、離婚、失業――ARIA世代にはあらゆるピンチが襲ってきます。そんな人生最大のピンチに陥ったときに、局面を打開するきっかけになった「逆転の一冊」を聞くリレー連載。一度はどん底を見た女性たちが「人生を好転させる」のに役立った虎の子の一冊とは? 今回は、元厚生労働事務次官の村木厚子さんの一冊。「人生の常備薬」という『エースをねらえ!』の味わいどころを語ります。

(上)『名探偵コナン』が無罪の私を救った
(下)『エースをねらえ!』は管理職の鑑 ←今回はここ

管理職になると、宗方コーチに心を動かされるように

―― スポ根マンガ『エースをねらえ!』を長年読み返す中で、村木さん自身に変化はありましたか?

村木厚子さん(以下、敬称略) 主人公の岡ひろみの真っすぐさに引かれるのは何十年たっても変わりませんが、読む時々で自分が置かれている立場によって、それまでは気付かなかった言葉の奥深さに気付くようになりました。

「エネルギーが切れている時に『エースをねらえ!』を読むと、何歳になっても同じように元気がもらえるんです」

 例えば、最近読み返して面白いなと思ったのが、宗方仁コーチの後を引き継いでコーチとなった桂大悟が、ひろみに言う言葉。

 「勝つと自信がつく。負けると勉強になる」

 これは人を育てる、とてもすてきな言葉だなと思います。

 私はずっと、ひろみの成長物語に自分を重ねて読んでいましたが、ある時点から、コーチサイドで読むようになりました。人が育つ環境をいかにつくっていくか、という部分に気持ちが動かされるようになったんですね。そうなると、ひろみの先輩・お蝶夫人の「先駆者は常にすて石」という立場や、コーチ陣の厳しい言葉がぐっとくるようになりました。

―― それは、村木さん自身の立場が変わったからでしょうか。

村木 そうですね。私自身が管理職として人を育てる立場になってからです。 自分がその部署を背負っているという感覚になったのは、41歳で(旧労働省の)課長になった時でした。