裏切り、病気、孤独、死別、離婚、失業――ARIA世代にはあらゆるピンチが襲ってきます。そんな人生最大のピンチに陥ったときに、局面を打開するきっかけになった「逆転の一冊」を聞くリレー連載。一度はどん底を見た女性たちが「人生を好転させる」のに役立った虎の子の一冊とは? 連載第1回は、元厚生労働事務次官の村木厚子さんの一冊。なんと、あのマンガへの熱い思いを語りました。

(上)『名探偵コナン』が無罪の私を救った ←今回はここ 
(下)『エースをねらえ!』は管理職の鑑

「コナン君」の教えが、無罪判決を導いた

―― 村木さんの人生で、最も苦境に立たされた時期というと、やはり、2009年の郵便不正事件で、無実の罪で逮捕されたことでしょうか。

村木厚子さん(以下、敬称略) 仕事で追い詰められたことも多々ありますが、振り返るとどれも意外と勉強になったな、ということが多いんです。だから、思い出すのもつらいというようなことって実はあまりないのですが、無実の罪で逮捕され、5カ月に及ぶ拘置所生活を送ったことは、なかなかにない体験だったと思います。

 私は、実態がない障害者団体を、郵便割引制度の適用団体と認めるための偽の証明書を発行するように部下に命じたということで、虚偽有印公文書作成・同行使の罪に問われていました。部下に犯罪行為を指示したとされ、かつての同僚が、私が不正に関与したという調書にサインしたのを見た時は、さすがにこたえました。

―― 検察が有罪へのストーリーを作り上げる中、無罪判決への足掛かりを見つけたのは村木さんご自身だったそうですね。

村木 「あれ?」と思ったのは、大阪拘置所で開示された捜査報告書に目を通していた時です。部下が偽の証明書を作成した際の、フロッピーディスクの最終保存日を見つけました。これは、私が彼に指示をして証明書を作成させたという検察側のストーリー上の日付より前だった。これが無罪判決へのきっかけとなりました。

 実は、この発見ができたのはアニメ『名探偵コナン』のおかげだと思っているんです。

『名探偵コナン』のアニメを10年以上欠かさず見ている村木さん。愛用するスマホケースにもコナンの姿が!