辞めるつもりはない、予定日約一カ月前から産休を、生まれてから一年は育休を取りたい、と上司に伝えたら「旦那さんはそれで良いって言ってる?」と訊かれた。彼は夫の勤務先を知っている。旦那さんの稼ぎだけでも子供を私立に入れるくらいはできるでしょう、とも言われた。弊社の給料もそこそこ良い。たぶん彼は同じことを言って奥さんに仕事を辞めさせた人なんだろうな、と悲しくなったのを憶えている。

(C)PIXTA
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 一年半後に復職したら、元いた部署に新しいチームができていた。私と、既に定年し嘱託として勤務する年配の男性のふたりだけのチーム。席はある、でも仕事が振られない。

 ――保育園のお迎えがあるでしょ。

 ――お子さんが熱出したら呼び出されるでしょ。

 ――家事もいろいろ大変でしょ。

 私もみんなと一緒に元の仕事がしたい、と訴えても、そんなようなことをやんわり言われ拒否された。そして実際にお迎えがあるし熱が出たら呼び出されるし検診や予防接種もいろいろあった。

 夫は協力してくれようとした。私と同じく専業主婦の母親と企業戦士の父親に育てられた子供である夫は、結婚するまで洗濯機の使い方も知らなかったような男だが、彼なりに努力はしてくれた。でもそれも「手伝う」「協力する」の範疇を出ず、結局子供が体調を崩したら病院に連れてゆくのは当たり前のように母親で、保育所のお迎えも当然母親で、家や公園でも子供は目を離したら簡単にケガはするし、現実的に出産前と同じクオリティで同じ仕事をするのは不可能だった。ただ、それを認めたくなかった。

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