この連載では、キャリアを積み上げてきた日経ARIA読者も「あの人はどんなやり方で成果を出しているんだろう?」と気になりそうな方から、うまくいくコツや、失敗から学んだことを聞き出します。ikunoPR代表の笹木郁乃さんは、無名だった寝具「エアウィーヴ」をPRの力で人気製品に押し上げた実績から、PRのプロとして引っ張りだこになっています。インタビュー2回目は、在庫となっていた鍋を、1年間のPR戦略で入荷1年待ちの人気商品に変えるのに貢献した、PRの極意について聞きました。

―― PRをゼロから立ち上げたエアウィーヴ(前回記事参照)を辞めて、PR人生第2の舞台となる愛知ドビーという会社で「バーミキュラ」という鍋のPRに携わります。そのきっかけは?

笹木郁乃さん(以下、敬称略) 愛知ドビーは、エアウィーヴと同じ名古屋発の企業ということで、テレビ番組などで一緒になる機会があったのですが、PR担当者を見たことがない。鍋を抱えて立っている人が取締役だったなんてことも。バーミキュラの魅力は知っていて、まだ認知が伸びる可能性を感じていたので「これはチャンス!」と思いました。

エアウィーヴの売り上げが1億円から120億円に成長するのをPRで支えた笹木郁乃さん

笹木 バーミキュラは鋳物ホーロー鍋で、老舗鋳造メーカーの愛知ドビーが製造しています。町工場で職人が作り上げる密閉性の高い鍋として、2010年の発売当初から雑誌やテレビなどに取り上げられ、注文しても15カ月待ちとなり話題になりました。しかし、メディアでの露出が落ち着いたことや生産設備を拡充したことで、2015年当時は納期待ちが解消。在庫を抱えている状態でした。

 愛知ドビーは人材募集をしていなかったのですが、会社の規模からも専任のPR担当者はまだいなさそうで、自分の出番を感じました。会社のサイトのお問い合わせ先から、いきなり「働きたいです」とメールを送ったところ、すぐに社長との面談をセットしてくれました。5年間のPRの実務経験と、ベンチャー企業を大きくした実績で自分の市場価値が認めてもらえた、と自信を持ちました。転職を決めたと伝えると、エアウィーヴの高岡本州会長(現・取締役会長兼社長)は最初、ありがたいことに強く引き留めてくださいました。でも、エアウィーヴは大きくなり、PR部門には後輩も育っていたので、再び「私がいないと回らない」規模の企業で挑戦する道を選びたい。最後には会長も私のキャリアを考えて理解してくれました。育児休業から明けて4カ月というタイミングにもかかわらず応援してもらえたことは、今でも感謝しています。

 実は、私には企業や商品のPRを行う上で大事にしている「PRの3原則」があります。この3つが揃っていたからこそエアウィーヴは売れたんだと、一時期、PRの現場で一緒に試行錯誤した電通パブリックリレーションズの西澤朋子さん(当時)ともよく話していました。その観点から、バーミキュラはぜひともPRしてみたい商品でした。