月経期に歯周病菌が繁殖する理由

 発症にかかわっているのはプラーク(歯垢)の中の歯周病菌。プラークは歯に付着した粘り気のある細菌の塊で、1mgの中に10億個の細菌がすみついているとされ、その中に歯周病菌が特異的に存在する。

 「歯周病菌が増殖して免疫細胞の白血球と戦い始めると、白血球を歯肉に大量に送り込もうとして毛細血管が膨張する。それにより、歯肉に腫れや赤みが生じる。膨張した血管壁は破れやすいので歯を磨くと出血が見られるようになる。一方、歯周病菌と戦った白血球の残骸から放出されるたんぱく質分解酵素が、逆に歯肉の細胞を破壊する。その結果、歯と歯肉の間に『歯周ポケット』ができてしまう」(若林院長)。

 空気のない環境を好む歯周病菌にとって、歯周ポケットにたまるプラークは絶好のすみか。さらに菌が増殖し、炎症が奥深くへと広がっていく。

 歯周病菌の中には女性ホルモンのプロゲステロンを栄養に増殖するタイプ(プレボテラインターメディア)があり、プロゲステロンの分泌が増える月経期は症状が増悪しやすい。また、「歯周病による炎症反応で、妊娠中は陣痛を誘発するプロスタグランジンの分泌が促され、早産や低体重児出産のリスクが高まることもある」(若林院長)。

 歯周病の全身への影響はそれだけではない。「血管の弾力がなくなって動脈硬化が引き起こされ、心筋梗塞や脳梗塞の原因にもなりやすい。糖尿病や肥満の悪化因子になることも分かっている」(若林院長)。

歯周病菌は血液に乗って全身の病気のリスクを上げる
歯周病菌は血液に乗って全身の病気のリスクを上げる
歯周ポケットから血中に入り込んだ歯周病菌は、中性脂肪の増加、動脈硬化など、さまざまな病気のリスクを上げる。糖尿病は歯周病の悪化因子になるが、逆に歯周病の炎症反応が糖尿病を重症化させることが分かっている。

 次回は、歯周病ケアの基本について紹介します。

 こちらへどうぞ ⇒ 歯周病ケアの基本を始めよう 唾液を出して歯垢を取る

若林健史
若林歯科医院(東京都・渋谷区) 院長
若林健史 歯周病治療の第一人者。日本歯周病学会専門医・指導医。「歯周病を治療すれば血管がしなやかになることで、アンチエイジング効果もある」。

取材・文/海老根祐子 イラスト/三弓素青 写真/PIXTA  構成/羽田 光(日経DUAL編集部)

日経ヘルス2016年7月号掲載記事を再構成

この記事は雑誌記事掲載時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります