変化のスピードが早くなり先が見通せない今、組織に多様性が求められるのと同じように、個人にも新しい価値観の獲得や学びによる成長が求められています。そのための「出合い」の場を持っていますか? 日々の仕事や自分の成長に「停滞感」を覚えているミドル世代にこそ必要な「越境」の始め方とその効用を探る、大特集です。

「越境」の境とは? 本当に境は存在している?

編集部(以下、略) 仲山さんといえば、楽天で唯一のフェロー風正社員(兼業自由・勤怠自由の正社員)として、本業以外でもさまざまな場で活躍する「越境の達人」というイメージです。ネットショップ運営者を応援する仕事をしながら、自ら会社を立ち上げたり、横浜F・マリノスとプロ契約を結んでコーチ向け・ジュニアユース向けの育成プログラムを実施したり。越境の効用は何だと思いますか?

仲山進也さん(以下、仲山) えっと、その前に、そもそも「越境」って何でしょう? 僕が「越境している」ということですけど、自分の周りに線がはっきり引いてあるわけでも、ベルリンの壁みたいなものがそびえ立っているわけでもない。境があるというのは思い込みかもしれないですよね。

 僕の感覚では、お客さんとやり取りをする、コミュニケーションをするときは、既に会社の外側にいる感じがします。(自分の)お店の外で、お客さんと立ち話をしているイメージが近いかもしれません。もう外にいる場合、どこまでお店から離れたら「越境している」ことになるかって、よく分からないなと思うんです。

―― なるほど。仲山さんが楽天以外のさまざまなプロジェクトに参画していることを指して「越境」と呼ぶことには違和感があるということでしょうか。

仲山 そうですね。ホームからアウェーに出る感覚、他流試合をしている感覚はあります。他流試合って、知らない道場に行って「試合をしてください」と申し込むイメージですが、プレースタイルは相手の流派に合わせるわけじゃない。今まで自分がやってきたことをベースに、相手のやり方も見ながら合わせていく。逆に言うと「自分は何者なのか」「どんな価値を提供できるのか」がはっきりしてないと、相手側に引っ張られ過ぎてしまいます。

―― では、これまで「ホームひと筋」で働いてきた人がアウェーに出てみようと考えたとき、一歩を踏み出すためのヒントはありますか?

仲山考材代表取締役、楽天グループ 楽天大学学長 仲山進也さん
仲山考材代表取締役、楽天グループ 楽天大学学長 仲山進也さん
慶應義塾大学卒業。シャープを経て、創業期の楽天に入社。2000年に楽天市場出店者の学び合いの場「楽天大学」を設立。07年に楽天で唯一のフェロー風正社員となり、08年には自社・仲山考材を設立。16年に「横浜F・マリノス」とプロ契約、コーチ向け・ジュニアユース向けの育成プログラムを実施。20年にわたり数万社の中小・ベンチャー企業を支援している。モットーは「仕事を遊ぼう」。最新刊に『「組織のネコ」という働き方』(翔泳社)がある。
仲山さんが考える「組織に属している人の働き方の4タイプ」。詳細は次から紹介
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