Withコロナの日常では、人とのコミュニケーションも変わりました。自分と向き合う時間が増えた今、自らの感情を知り、上手にモチベーションを高めていくことが大切。ストレスや負の感情をどう整理し、柔らかい心を保っていけばいいのか。リモート環境でもできる感情マネジメントやチームメンバーの心理的安全性についても考えていきます。

考えることは得意だけど、感じることは苦手な日本人

 対話の力で社内を活発化させ、サンリオピューロランドの業績をV字回復させた立役者、小巻亜矢さん。コロナ禍でも、つねに前向きに物事に対処する小巻さんですが、かつては自分の感情を表現したり、深いコミュニケーションを取ったりすることが苦手だったといいます。40代からコーチングと心理学を学び、感情に目を向けることで自分自身の行動も組織も変えた小巻さんに、感情モニタリングについて聞きました。

小巻亜矢 サンリオエンターテイメント代表取締役社長
小巻亜矢 サンリオエンターテイメント代表取締役社長
こまき・あや/サンリオピューロランド館長。1983年サンリオに入社。結婚退社、出産を経てサンリオ関連会社にて復職。2014年サンリオエンターテイメント顧問に就任、翌年サンリオピューロランド館長に。51歳から東京大学大学院教育学研究科に通い始め、修士課程修了。館長就任から2年で、業績のV字回復をなし遂げた。ウーマン・オブ・ザ・イヤー2020大賞受賞者。

―― 以前ARIAアカデミー(小巻亜矢 能動的に課題解決する『学び合う組織』とは?)でも、感情的知性(EI:Emotional Intelligence)に着目して自分の感情を適切に取り扱うことを心掛けていると語っていましたね。私たちは、日常でどのように自分の感情と向き合えばいいのでしょうか?

小巻亜矢さん(以下、敬称略) 良く悪くも、私たちは「よく考えなさい」と言われて育ったので、考えることは比較的得意ですが、「感じてごらん」と言われた記憶はあまりないですよね。だから自分の感情に目を向けるのが不得意で、感情の表現も控えめ。「感情的になる」ことがネガティブに取られやすい国民性だと思うんです。

 まして女性は、「女らしくない」とか「はしたない」と言われて、気持ちを閉じ込めてきた部分があると思います。

感情に目を向けることは、自分を大切にすること

 「イライラする」「ムカっとする」といった一般的にネガティブだと思われている感情も含めて、感情が発露するのは止められないし、コントロールできない。そこをちゃんと感じることが、自分を大切にする第一歩。感情に良いも悪いもないということが大前提です。

―― 確かに、大人になるにつれ喜怒哀楽を抑えがちになりますし、自分の感情に目を向けることはあまりしていないかも。小巻さん自身はどうでしたか?

小巻 私自身も実は感じることが不得意だったんです。45歳でコーチングを学んだことがきっかけで、自分の感情に目を向けるようになりました。