Withコロナの日常では、人とのコミュニケーションも変わりました。自分と向き合う時間が増えた今、自らの感情を知り、上手にモチベーションを高めていくことが大切。ストレスや負の感情をどう整理し、柔らかい心を保っていけばいいのか。リモート環境でもできる感情マネジメントやチームメンバーの心理的安全性についても考えていきます。

 働き方がガラッと変わってしまった2020年。多くの人がリモートワークに挑戦し、オンラインのコミュニケーションの難しさにストレスを感じたり、チーム運営のやり方に悩んだりしたのではないでしょうか。一人ひとりが意見や疑問を言える、新たなことに挑戦する活気あるチームをつくるために、リーダーに何ができるのか。企業の心理的安全性の構築をサポートするZENTechの取締役 石井遼介さんに話を聞きました。

分かりやすく再定義された心理的安全性

―― 多くの人がコロナ禍のストレスの中、チーム運営に悩んでいます。キーワードとして「心理的安全性」が注目されていますが、どのような状態のことをいうのでしょうか。

石井遼介さん(以下敬称略) 「心理的安全性」という言葉は今から半世紀以上前、経営学のエドガー・シャインとウォーレン・ベニスの2人が組織開発の文脈で使ったのが最初です。1999年には、ハーバード大学のエイミー・C・エドモンドソンが論文で「チームの心理的安全性」という概念を打ち立てました。その後Googleが成果を上げるチームの特性を知るために2012年に立ち上げた「プロジェクト・アリストテレス」がその有効性を再発見したことで、ビジネスの世界でも話題になりました。

 エドモンドソン教授は「チームの中でリスクをとっても大丈夫だ、というチームメンバーに共有される信念」のことを心理的安全性と定義しましたが、ちょっと分かりにくい。

 そこで私たちはさまざまな業種の日本企業のデータを分析して、心理的安全性は、「チームの中で地位や経験に関わらず率直に意見を言ったり、素朴な疑問を言い合える状態」と再定義しました。その上で、心理的安全性を構築するためのフォーカスポイントを見出しました。

 フォーカスポイントは4つ。「話しやすさ」「助け合い」「挑戦」「新奇歓迎」です。リーダーはこの4つをものさしとして持っていると、チームの状態が分かりやすいと思います。「うちのチームは話しやすさと助け合いはあるけどあまり挑戦はしないな」とか、「挑戦はするけど個別に行動して助け合いや情報交換はしないな」という具合です。

 より具体的に考えるなら、立場を越えて「もうちょっとこうしたほうがいいんじゃないですか?」という率直な意見や、仕事を進める上で必要な疑問が聞けるかどうかも、大事な目安になると思います。そのような会話が活発に交わされる環境が心理的安全性のある状態ということです。