Withコロナの日常では、人とのコミュニケーションも変わりました。自分と向き合う時間が増えた今、自らの感情を知り、上手にモチベーションを高めていくことが大切。ストレスや負の感情をどう整理し、柔らかい心を保っていけばいいのか。リモート環境でもできる感情マネジメントやチームメンバーの心理的安全性についても考えていきます。

働き過ぎて疲れているのかな…に潜む鬱のサイン

 好きだったはずの仕事がつらくなってきたり、以前ほど効率良く行動できなくなったり、眠れなくなったり……働き過ぎて疲れているだけのようにも聞こえますが、もしかするとこれらは、鬱のサインかもしれません。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 所長の金吉晴さんは、在宅勤務による働く女性への心理的影響を以下のように話します。

 「女性は、幸せホルモンとも呼ばれるオキシトシンが優位に働くことで、心の均衡を保っている一面があります。オキシトシンに導かれ、優しい気持ちで思いやりを持って接することが、ストレス軽減につながります。在宅勤務で人と会わなくなり、おしゃべりしたりスキンシップしたり、人に優しくしたりする機会を失うと、ストレスを減らす機会も失われてしまいます。

 例えば、これまで職場でリーダーシップを取っていた女性の場合は、在宅勤務によって部下と会う日が減り、マネジメントの機会や管理職としての実感をリアルで得られなくなった結果、ストレスがたまってしまい、徐々に鬱っぽくなっていく可能性があります。とくにサクセスストーリーを歩んできた人は鬱を他人事として捉えてしまいがちで、自分の身に起きていても気が付かないケースもあります」(金さん)

 ある日、久しぶりにオフィスに出勤してみたら、あんなに行きたかったはずの職場がつまらない。仕事も以前のようにスムーズに進められない。意味も無くいらだったり、泣いたりしてしまう。これらに身に覚えがある場合は、鬱の傾向があるかもしれません。

 また、在宅勤務で運動量が減り、あまり空腹を感じなくなり、深夜まで仕事を続けて夜更かし癖がつき、眠れなくなっているような場合も、実は鬱に近い精神状態です。さらに、在宅勤務により一日中パートナーと一緒に過ごすことがストレスになっている人もいます。

 このように、環境変化が重なり、知らず知らずのうちに心が疲弊し鬱状態に向かっていくことは、誰の身にも起きうるのです。金さんによると、不安な気持ちやストレスが強まっているときは、3つの感情チャンネルが反応するそうです。

国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所行動医学研究部「感情調整の方法」を基に編集部作成
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所行動医学研究部「感情調整の方法」を基に編集部作成