「副業元年」といわれた2018年からはや2年。企業がじわじわと副業解禁へかじを切っているものの、実際に副業を始めたARIA世代はそれほど多くはないようです。けれども「これからはARIA世代にこそ、副業が欠かせない」と専門家は話します。では、何から始めるべき? 本業と副業のバランスをどう取る? 思わぬ落とし穴は? 副業の最前線をリポートします。

ARIA世代の副業三者三様。それぞれの胸の内は…

 前回は、管理職として働きながら起業をした女性、兼業で地方創生のリード役になっている二人を紹介しました。今回は、「お金が第一優先じゃない」と話すARIA世代3人の副業のケースを紹介します。

 まずは一部上場企業で働き、2人の子どもを育てながら、合格率3~5%前後と難易度の高い中小企業診断士の資格を13年かけて取得。4年前から中小企業診断士としても活躍する高田直美さんです。「副業に稼ぎは求めていない」とキッパリ言うものの、本業の半分程度の収入があり、大半をNPO団体に寄付しているといいます。しかし、あくまでも本業あっての中小企業診断士としての仕事、と考えているそうです。

 二人目は「水泳は私の人生そのもの」と話す新生銀行の澤田はるみさん。水泳指導員を副業にしていますが「水泳指導員を本業にするのはつらい。本業は銀行員でよかったな、と改めて思います」と笑います。3人目は「未来への種まき」のためにキャリアコンサルタントとして活動を始めたロート製薬の矢野絢子さん。三者三様の副業事情に迫りました。

「仕事を一所懸命していた」は価値がない

 第1子が生まれたときに、「一生働き続けたい。そのためには強い資格がいる」と思ったこと、そして「もし転職活動をすることになったら、『仕事を一所懸命していました』と言うのは何の価値もないよ」と先輩に言われたこと。一部上場企業の正社員として働く高田直美さんは、この2つをきっかけに合格率3~5%前後と難易度の高い中小企業診断士の資格を目指して取得し、4年前から中小企業診断士としても活躍しています。とはいえ、あくまでも子育てと本業とを最優先にしていたため、資格取得にかかった年数は、実に13年。

 「今は国の働き方改革のおかげで残業規制があって時間に余裕があるのですが、10年近く所属していたマーケティングの部署では出張も休日出勤も多く、とても忙しかった。2人の子育ても忙しいタイミングで、独学を続けてはいましたが、集中的に資格の勉強に充てる時間が圧倒的に足りませんでした」

 「細々と」とはいえ、13年も勉強を続けるのは並大抵のことではありません。なぜ、中小企業診断士だったのでしょうか。

 「実は、強烈な動機はありませんでした。経営全般のことをもっと知りたいという漠然とした思い、そして本業の仕事や一生働き続けるために役立つかもしれない、という緩い動機で(笑)。MBAも候補に考えたのですが、子どもが小さいときに夜間大学に通って学ぶのは難しい。中小企業診断士は独学ができますから、まあ、いつか受かればいいかなと、だらだら勉強を続けていました。最後の1年間は、子どもの受験も学校や地域の役員も終わっていたので、資格の予備校に通い、授業前後も仲間と集まって勉強。『この試験を乗り越えたときに何かがあるかもしれない』をモチべーションに、50分の通勤時間、就業後、夏・冬休みにみっちり集中的に学びました」

 見事、資格試験を勝ち抜いても「中小企業診断士が具体的に何をやり、どう稼ぐのか」は分からなかったという高田さん。副業を始めようとも思っていなかったそうです。そんな高田さんが資格取得後にまず始めたのが、中小企業診断士資格の受験生を支援することでした。

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