リーダーとしての振るまい、上司・部下のコミュニケーション、失敗のリカバリー、情報収集……常に業界の最前線をひた走るトップランナーたちは、どのような仕事術を持っているのでしょうか。注目を集める各界のトップランナー5人が集結。誰もがまねをしたくなるとっておきのルールを聞きました。

 「ラベルのない『ブラインド』の状態で試食し、自分の舌で選び抜いたおいしいものしか売らない」「1ジャンルにつき、原則1銘柄しか置かない」「安心安全が大前提」――食への妥協を一切許さないスマイルサークル社長の岩城紀子さんが展開するのが「グランドフードホール」(以下、グラホ)です。食への愛、作り手への愛、客への愛、スタッフへの愛。愛をベースに躍動し、食品業界に旋風を巻き起こす岩城さんの仕事のルールとは?

スマイルサークル代表取締役社長・岩城紀子さん
スマイルサークル代表取締役社長・岩城紀子さん
1972年、兵庫県生まれ。ギャップジャパン、機能性食品開発のバイオベンチャーを経て、2008年にスマイルサークルを設立。さまざまな食品会社のコンサルタント業やバイヤー代行を務める。14年にはおいしいものだけを売るグランドフードホールを設立。兵庫県・芦屋市と東京・六本木に店舗を展開。百貨店など100社の販売先、全国各地の2600社のメーカーと取引している

原点は、おばあちゃんの「最高の味」

―― アパレルのギャップジャパン、機能性食品のベンチャー企業を経て、2008年に百貨店の食品バイヤーの代行などをするスマイルサークルを起業しています。これまでのキャリアについて教えてください。

岩城紀子さん(以下、敬称略) 私の原点にあるのは、おばあちゃんがくれた「おいしい」を私も誰かにつなげたい、という思い。小さい頃は3世代同居で暮らしていたのですが、料理全般を一手に引き受けていた祖母は、「いいものを食べると舌がキレイになるからね」と言って、いつも手をかけ、心を尽くしたおいしいものを作ってくれました。私が27歳のときに祖母は亡くなりましたが、今でも私の「最高の味」は祖母が作ってくれたしば漬けおにぎりです。

 もともと、漠然といつかは起業をしたいという思いもあったんです。でも、どんな事業で起業できるのかも、何で勝負ができるのかも分からへんっていう状態で。まずは日本に上陸したばかりで勢いがあったギャップジャパンで働きました。仕事はむちゃくちゃ楽しかったし、私はできることなら出世をしたいと思うタイプ。権限が持てますからね。最終的には、日本のトップ3まで出世をしたんです。

バイヤー代行という仕事にビビビっときた

岩城 でも、やっぱり私は食べ物に関わる仕事がしたい……そう考えていたときに、たまたま、当時の部下のお父さんが機能性食品を開発するベンチャー企業を作ると聞いて。32歳のときに転職しました。

 そこで知ったのが、食品業界の闇でした。恐ろしくなるほどの食品添加物を使っていて、「自社製品を食べたくない」と話す食品メーカーの方にもたくさん会いました。当時の私は「日本ほどいい国はない」と思っていたんですが、食品に関してはこんなにひどい国やったんや、って衝撃を受けました。一方で、100%安心できる食品がたくさんあることも知っていて。その「安心、安全で本当においしいもの」を広める仕事をしたいという思いが、ふつふつと芽生えてきたんです。

 そんなときに出席したあるパーティーで、隣の席がたまたま百貨店の会長さんやったんです。そこで「百貨店の代わりにおいしいものを発掘する、バイヤー代行業務がこれから必要になるんとちゃうか?」と。そこでビビビ! ときましたね。本当においしいものを見つけ出して売り込む仕事。おばあちゃんが育ててくれた舌が生かせ、安全な食べ物を届けたいという思いもかなう、それや! って。

2014年にオープンしたグランドフードホール芦屋本店。岩城さんが認めたおいしい食品が約450種類並ぶ。六本木店の調味料売り場では「調味料は絶対本物を!」という言葉が目についた
2014年にオープンしたグランドフードホール芦屋本店。岩城さんが認めたおいしい食品が約450種類並ぶ。六本木店の調味料売り場では「調味料は絶対本物を!」という言葉が目についた