昨年はコロナ禍で帰省を見送り、今年の年末は久しぶりに親と会う人も多いのではないでしょうか。まだまだ元気と思っていても、親は確実に年齢を重ねています。認知症や介護の問題は、ARIA世代にとっていつ直面することになっても不思議ではありません。お金のことや介護態勢の築き方、認知症のサインと対応など、いざというときに困らないために親と話しておきたいこと、知っておきたいことをまとめました。

 今後、親が病気や認知症になったとき、子どもは親に代わってさまざまな判断をし、変化に合わせた生活を整えていくことになります。そのためにも、今のうちに親といろいろ話しておくことが大事……とはいっても、決して気軽に話し出せる話題ではないのが現実です。親の気持ちに寄り添いながらスムーズにコミュニケーションを取るためには、どんなことを意識すればいいのでしょうか。父親を在宅介護でみとり、現在は東京都の民生委員として多くの高齢者と接している介護・福祉ライターの浅井郁子さんにお話を聞きました。

親はちゃんと終活している、でも子どもには言えない

編集部(以下、略) 通帳・印鑑など大事なもののことや、介護が必要になったときにどう暮らしたいかなど、親に聞いておかなければと思うことはいろいろありますが、実際、どう切り出せばいいのか悩ましいです。そしてついつい先送りに……。

浅井郁子さん(以下、浅井) 親が自分から話してくれればこんなに楽なことはないでしょうけれど、実際はそうはいかないんですよね。先送りということでは、親のほうがむしろ「子どもから言ってきたら話そう」と先送りしますよ。親子だからこそかしこまった場面は気まずいし、親にとってはギリギリまで知らせたくないことですから。結果、親と子のどちらが先に切り出すか、みたいな感じになっている。

 私は民生委員になってまもなく10年ですが、地元の70~80人くらいの高齢者が見守りの対象で、定期的に訪問してお話を聞いています。多くの方は、子どもが困らないようにと大事なことはちゃんとノートなどにまとめているんですよ。そのことを私には話してくれるのに、お子さんには言えないというんです。「言っておいたほうがいいですよ」といってもなかなか実行しない。

―― ことさら子どもと折り合いが悪いというわけでなくても、ですか?

浅井 はい。先ほど言ったように、親もどう切り出していいか分からないんです。それに、話したときに「お母さん、急にそんなこと言い出してどうしたの?」「どこか具合が悪いの?」などと質問攻めにされるのも嫌。だから直接は話さず、何なら「大事なものはここにあるから」と置き手紙をして入院したい。そんな美学を持っている方が多い印象です。

 でもその一方で、親の心中は不安だらけです。老いていくこれからの日々や最期のことなどは毎日のように考えていると思いますし、子どものことはいつまでも心配しています。だからこそ、子どものほうから話しやすい状況をつくる工夫をする必要があります。

―― どんなことを意識すればいいのでしょうか。

浅井 くれぐれも、直接的に「これとこれを聞いておかなくては」とは思わないことです。