昨年はコロナ禍で帰省を見送り、今年の年末は久しぶりに親と会う人も多いのではないでしょうか。まだまだ元気と思っていても、親は確実に年齢を重ねています。認知症や介護の問題は、ARIA世代にとっていつ直面することになっても不思議ではありません。お金のことや介護態勢の築き方、認知症のサインと対応など、いざというときに困らないために親と話しておきたいこと、知っておきたいことをまとめました。

 親と離れて暮らしていると、電話の声くらいでしか相手の状況が分かりません。この年末年始は、久しぶりに帰省して直接親の様子を見る絶好の機会。健康状態の変化、特に認知症の兆候が出ていないかは気になるところです。地域医療や認知症のケアに長年取り組む川崎幸クリニック院長で医師の杉山孝博さんに、どんな点に注目すればよいのか、おかしいなと思ったときの受診につなげるための工夫の数々など、具体的な対応のポイントを聞きました。

編集部(以下、略) 年末年始に親と久しぶりに顔を合わせます。認知症の兆候を見逃さないために気をつける点はありますか?

杉山孝博さん(以下、杉山) まず、認知症とは何かということから理解してもらったほうがいいと思います。認知症とは、記憶力・認識力・判断力・推理力などの知的機能が低下して、社会生活や日常生活に支障をきたす状態。つまり、自立した生活ができていた人が、物忘れがひどくなり、適切な判断力、推理力などの知的機能が低下したため、周囲に迷惑を起かける言動が出てきて見守りや援助が必要になった状態です。

 認知症の症状には、脳の神経細胞そのものの働きが低下して起こる中核症状と、中核症状が基本となって性格、体験、環境などと絡んで発生する行動・心理症状(BPSD)があります。

 中核症状には、記憶障害、理解・判断力の低下、見当識障害(時間・場所・人物が分からない)、テレビのリモコンや電話の操作ができないなどの実行機能障害などがあって、すべての認知症の人にいずれかの症状がみられます。

 BPSDは昔で言えば「問題行動」と言われたもの。多弁・多動、暴言・暴力、失禁・弄便(ろうべん)、徘徊(はいかい)、食行動異常(異食・過食・拒食)、昼夜逆転、幻覚・妄想、性的異常、抑うつ、不安・焦燥、興奮、せん妄などがあります。表れ方は人によって差があり、環境の変化や認知症の進行によって出てくるものです。

認知症の兆候を知る20のポイント

―― 加齢による物忘れと認知症の見分け方はありますか?

杉山 頑固で怒りっぽい人、人の話を聞かない人、物覚えが悪いなど、もともとの性格が認知症の症状と紛らわしい人もいますよね。一方で、50代になれば普通の人でも人の名前が出てこないということも起こりえます。

 そこで、次ページの「認知症の人と家族の会」が作ったチェックポイントを目安にしてもらうと分かりやすいと思います。