如月 やっぱり、いきなりお葬式を出さなければいけなくなったことです。だって、前の日の夕方まで普通に仕事して生活していて、突然「お父さんが家で死んでいました。警察に遺体を引き取りに来てください」と言われるんですよ。

 例えば病院に入っていれば、もう少しでお迎えが来そうだと連絡をもらえたりして心の準備ができるし、最後のお別れに行くこともできます。でも、医療にかかっていないとそういう前触れは一切ありません。父は病院に行くのも嫌がりましたから。

 知らせを受けて慌ただしく飛行機で故郷へ向かい、空港からそのまま警察へ直行すると、いきなり現場検証の写真を見せられました。「お父様に間違いないですね?」と。発見されたときの、父がうつぶせに倒れている状態の写真、顔を表に向けた写真、顔のアップの写真。そのときに見た父の顔は今も忘れられません。

「現場検証の写真に写っていた父の顔は忘れられません。ああ、こんなふうになってしまったんだ、と」
「現場検証の写真に写っていた父の顔は忘れられません。ああ、こんなふうになってしまったんだ、と」

父の口座から毎月3500円、謎の引き落としの正体は…

―― 少し実務的なことを伺うと、先ほどお話にありましたが、如月さんはお金まわりのことなど、大事なものがどこにあるかは聞いておけたんですよね。

如月 そうですね。ただ、大変だったのは携帯電話やインターネットのプロバイダーなど、いろんなものの解約連絡です。何をどこと契約していたかなんて分かりませんから、銀行で通帳記帳をして、引き落とされているものをチェックし、連絡先を調べて1つひとつ電話をかける。全部つぶしていくのに丸2日かかりました。

 そのとき、毎月3500円くらい引き落とされているものがあったんですね。カタカナの名称では何やら分からず、よくよく調べたら、テレビをなぜか分割払いで買っていたことが判明。3万円くらい残債がありました。

 私は大事なもののありかは知っていましたが、親の財産がどれくらいあるかは知りませんでした。父は現金をほとんど残しておらず、実家の維持にかかるお金や母の介護費用など、一時は持ち出しを覚悟しました。

 なかなか話してもらうのは難しいかもしれませんが、親がどれくらいお金を持っているのかを聞いておけたらいいですよね。あとは逆に、何かローンを組んだりしていないか。うちは3万円で済んだのでよかったですけれど、周りに聞くと、親が300万円の着物をローンで買っていたなんていう話もめずらしくないんですよ。妙に高価なものがいつの間にか実家にないかなど、帰省するたびにさりげなくチェックしたほうがいいと思います。