親に介護が必要になったり、相続について話し合う必要が出てきたりすると、いろいろなトラブルが起きがちです。特に、きょうだいと意見が衝突すると長年にわたる骨肉の争いに発展することも。事前に知っておくべきポイントや準備しておけることを、専門家や経験者に取材しました。

相続で兄弟姉妹がもめる3つの原因

 大人になっても仲の良いきょうだい関係を維持している人も、普段は距離を置いている人も、相続をきっかけに修復不可能なトラブルに発展する可能性は少なくない。

 相続に関するコンサルティングを行う「夢相続」代表で相続実務士の曽根恵子さんは、相続問題で最もトラブルになりやすいのはきょうだい関係だと話す。

 「当社に寄せられた直近14年間の相談を分析すると、およそ6.5割がきょうだい間で発生した遺産分割に関するトラブルでした。話がまとまらず、10年以上分割協議をしている家族、悲しいことに絶縁してしまうきょうだいも少なくないですし、中には30年以上相続の配分が決まらないケースも。なぜきょうだいは相続でもめごとになりやすいのか、その理由は主に3つあります」

 曽根さんによると、「親の全財産が不明瞭」「コミュニケーションが取れない」「家などの不動産が分けられない」の3点が遺産分割でもめる原因になるそうだ。

曽根恵子 夢相続代表 相続実務士
曽根恵子 夢相続代表 相続実務士
感情面、経済面に配慮した「オーダーメード相続」をコンセプトに、家族の絆を深める相続の実現をサポートしている。著書多数。近著に『親が元気なあいだに子どもがヒアリングしながら書く相続ノート』(秀和システム)、『親が死ぬ前に、家族とやりたい10のこと』(クロスメディア・パブリッシング)がある

 「いざというときになってから、相続を考えるようでは遅過ぎます。本来、相続とは親と子、家族が今後も安心して過ごせるようにするためのもの。親が健在で、意思決定ができるうちに家族で話し合い、遺産分割の取り決めをし、公正証書などの形で遺言書を作成しておくのが理想的です。家族の間で相続や遺言書の話をすると、『親が元気なうちはまだ早い』と敬遠されがちですが、親が元気だからこそ、早めに取り掛かっておくことが何より大事です」

 では、相続を考えるとき、まずどんなことから始めればいいのか、きょうだいとトラブルにならないためにはどうすればいいのだろうか。