コロナの自粛期間中に家にこもり、ため込んだモノの多さにあらためて直面した人が大量発生。でも忙しいARIA世代はもっといろいろなモノ・コトをため込み、抱え込んでいます。長大なTO DOリスト、我慢を強いられている仕事のあれこれ、人間関係、生活習慣、思い込み……やめて、手放すことで新しいステージが見えてくる。今だからこそ「幸せになるやめ方、手放し方」を同時代の先達に学びます。

 キャリアの曲がり角に差し掛かるARIA世代。責任や義務ばかりが増えてしまい、モヤモヤした気持ちのまま前に進めない人も少なくありません。そんな仕事周りの悩みをスッキリさせてくれる達人、人気連載「昼スナックママに人生相談」の紫乃ママに「やめる・手放す」ための極意を聞きました。

木下紫乃 きのした・しの/昼スナックひきだしママ 慶応義塾大学卒業後、リクルート入社。その後、転職を繰り返し、47歳で慶応義塾大学大学院修了。2016年に40代、50代のキャリア再構築を支援する会社「ヒキダシ」を設立。企業研修(セカンドキャリア研修)や中高年のキャリアコーチングをなりわいとする傍ら、昼だけ営業する「スナック ひきだし」を開店。ARIA連載をまとめた著書『45歳からの「やりたくないこと」をやめる勇気』(日経BP)を上梓。
木下紫乃 きのした・しの/昼スナックひきだしママ 慶応義塾大学卒業後、リクルート入社。その後、転職を繰り返し、47歳で慶応義塾大学大学院修了。2016年に40代、50代のキャリア再構築を支援する会社「ヒキダシ」を設立。企業研修(セカンドキャリア研修)や中高年のキャリアコーチングをなりわいとする傍ら、昼だけ営業する「スナック ひきだし」を開店。ARIA連載をまとめた著書『45歳からの「やりたくないこと」をやめる勇気』(日経BP)を上梓。

60%の満足度に慣れてしまう

―― コロナ禍で自分のキャリアをふと見つめ直したとき、「現状に満足ではないけれど、次にやりたいことも見つからない」というキャリア迷子のARIA世代は多いと思います。昼スナックに来られる方でもそういう悩みは多いですか?

紫乃ママ 「今の仕事の内容ややり方に満足してない」「コロナ禍でいろいろ考えている」という方は増えました。でも、ARIA世代は「慣れる天才」なんですよ。日々の満足度が60%だとしても、「まあいいか」と思えちゃう。満足度をさらに上げるためには何かを変えなくてはいけない。それって結構ストレスでしょ。これが人生満足度25%だったら我慢できないけど、60%であればなんとか慣れられる。だから、「本当はこうしたい」っていう気持ち自体を封印してしまってるのよね。

 私は50代向けの研修をやるとき「自分が何に対してワクワクするか」「どんなときに楽しいか」を思い出してもらうことがあるんですが、大学時代や、下手すると小学校時代まで遡らないとワクワクを思い出せない人がいる。感性が喜ぶ感覚を忘れてるんですよね。数十年間、義務や責任を求められ続けてきた私たち。親として、会社員として、管理職として、「あるべき姿」を自分で自分に押し付けてきちゃった。

―― 確かに、そうですね。そんな状態だと何かやりたいかなんて分からない。

紫乃ママ そう。だから最初は「やりたいこと」よりも「やりたくないこと」のほうが見つけやすいんじゃないかと思うんですよ。