華々しく活躍する人の陰には、失敗とその失敗から学んだ「なにか」が必ずあるはずです。気鋭の経営学者は「経営学的に見れば失敗はチャンス。失敗をしたらお祝いを」と言い切ります。では、どうすれば失敗から挽回できるのでしょうか。「失敗の達人」やレジリエンスの専門家に、失敗から成功につなげるコツ、危機の乗り越え方を伝授してもらいます。

失敗を乗り越える「心の回復力」は誰でも鍛えられる

 「多くの予算を投じて開発した新製品が全く売れなかった」「自信を持って臨んだ取引先へのプレゼンが不調に終わった」「トラブルを予見できず、お客様を怒らせてしまった」……。自分が取った行動によって誰かに迷惑をかけたり、会社に損害を与えたりした時、「失敗は次に生かせばいい」と頭では分かっていても、気持ちが沈んだままでしばらくは前向きに行動できなかった経験はないだろうか。

 そこで知っておきたいのが、近年注目を集めている「レジリエンス」。心理学において、困難な状況を乗り越える精神的な回復力を意味する言葉だ。

 「人によって多少の差はありますが、基本的には落ち込んでも元の状態に戻る『心の弾力性』は大人から子どもまで誰にでも備わっています。ただ、過度なストレスで心が疲弊する、長時間労働で体調が悪いといった状態がずっと続いていると、伸びきったゴムのように元に戻らなくなってしまう。レジリエンスを高めることは、心が弱まってしまう前の予防策になるのです」

 そう話すのは、ポジティブサイコロジースクール代表の久世浩司さん。大手外資系メーカー勤務を経て、現在はレジリエンスの専門家として職場環境などへの普及に取り組んでいる。「海外での競争が激しいグローバル企業では、リーダーシップの教育の一つとして、管理職などを対象にレジリエンスを高める研修が行われている」という。

 落ち込んだ時の精神的な回復力と聞くと、「あの人はメンタルが強い、打たれ強い」「私はいつまでもくよくよして失敗を引きずりがち」などとよく言うように、生まれつきの資質で変えようがないと思っている人もいるかもしれない。だが久世さんは、「レジリエンスを高めるための有効な手法が心理学の実証研究に基づいて見いだされており、筋肉を鍛えるように誰でもトレーニングすることができる」と話す。

 では、失敗を乗り越えるためにどうやってレジリエンスを高めていけばいいのか。次のページから久世さんに具体的に解説してもらう。ポイントは、「失敗に直面する前に、日ごろから3つの習慣を身に付けておく」ことだ。