華々しく活躍する人の陰には、失敗とその失敗から学んだ「なにか」が必ずあるはずです。気鋭の経営学者は「経営学的に見れば失敗はチャンス。失敗をしたらお祝いを」と言い切ります。では、どうすれば失敗から挽回できるのでしょうか。「失敗の達人」やレジリエンスの専門家に、失敗から成功につなげるコツ、危機の乗り越え方を伝授してもらいます。

 「私、失敗しないので」

 米倉涼子演じる大門未知子が毅然と言い放つせりふでおなじみのテレビドラマ『ドクターX ~外科医・大門未知子~』(2012年~、以下『ドクターX』)は、現在6シーズン目に突入し、視聴率も今クールでぶっちぎりに高く、絶好調。まさに「私、失敗しないので」を地でいく成績を収め続けているが、このドラマの生みの親の一人がテレビ朝日エグゼクティブプロデューサーの内山聖子さんだ。

 内山さんは、『ドクターX』を筆頭に『ガラスの仮面』『黒革の手帖』などヒットドラマを数多く手掛けているが、実は、初めて手掛けた連続ドラマでは大失敗。ド派手にコケて打ち切りになり、アシスタントに降格されたという。これ以外にも数々の手痛い失敗や挫折を経験。「ドラマを作り続けて25年、悔し涙を流したことも一度や二度ではありません。でも、失敗をやらかしたからこそ、今があるんです」と話す。

 「失敗しない女」大門未知子を生み出した、「失敗だらけの」内山さんが失敗から学んだ哲学はノウハウに満ち、私たちをときに慰め、ときに力づけてくれる。

内山聖子(うちやま・さとこ)
内山聖子(うちやま・さとこ)
テレビ朝日 総合編成局ドラマ制作部エグゼクティブプロデューサー
1965年福岡県生まれ。1988年津田塾大学英文学科卒業後、テレビ朝日入社。秘書室を経て制作現場へ。1995年からドラマプロデューサーとして『ガラスの仮面』(1997年)、『黒革の手帖』(2004年)、『ドクターX~外科医・大門未知子~』(2012年~)など、連続ドラマを多く手掛ける。最新刊に『私、失敗ばかりなので―へこたれない仕事術―』(新潮社)がある
「組織にいなければできない仕事もたくさんある」という内山さん。「組織のモヤモヤを跳ね返すヒロインがいたら……」という妄想からスタートしたのが『ドクターX』だったとか。内山さんが失敗から学んだこととは?
「組織にいなければできない仕事もたくさんある」という内山さん。「組織のモヤモヤを跳ね返すヒロインがいたら……」という妄想からスタートしたのが『ドクターX』だったとか。内山さんが失敗から学んだこととは?

初めて手掛けたドラマで恐怖の大失敗!

―― 内山さんはテレビ朝日に入社後、5年間の秘書室勤務を経てドラマ班所属となり、念願かなって初プロデュースした連続ドラマの第一話視聴率が8%、そして途中で打ち切りに……という経験をされています。

内山聖子さん(以下、敬称略) あれは20年たった今でも忘れられない失敗です。しかし、同時に私の原点であり、あの失敗があったから今がある、と思っています。

 初めて自分がプロデュースするドラマで豪華出演者が決まり、プレッシャーも感じないほど舞い上がっていました。ところが「絶対に面白い」と自分が信じていたものに「まったく人が共感しない」ということをはっきりと視聴率という数字で突きつけられました。特にテレビはその失敗を「さらされ」ます。箱を開けてみたときの恐怖はすごかった。社会人になって初めての経験でした。

―― 撮影中にドラマの打ち切りが決まったとき、どう行動しましたか。

ARIA世代には部下を持つ人も多いはず。内山さんには「部下の失敗とどう向き合うか?」についても聞いた。詳細は次ページ以降で
ARIA世代には部下を持つ人も多いはず。内山さんには「部下の失敗とどう向き合うか?」についても聞いた。詳細は次ページ以降で