令和を迎え、昭和的な家族観や結婚観が大きく揺らいでいます。「血縁こそ、家族」「妻、夫はこうあるべき」といった古い考えから解き放たれた多様な家族、そして結婚のカタチが生まれています。「離婚約」で夫婦の関係性を見直す人、人生後半の再婚で新たな絆を紡ぐ人、血縁にとらわれない家族をつくる人、夫婦の役割を柔軟に入れ替える人…変わりゆく家族、結婚のカタチに迫ります。

 既婚、未婚に関わらず、「おひとりさまの老後」は特別なことではなくなりました。そんな中で、「年を取ったら女友達と支え合って暮らしたい」というのもARIA世代のひそかな願望の一つ。その暮らしを実践しているのが、シェアリングサービス「Alice.style(アリススタイル)」を運営するピーステックラボ代表取締役の村本理恵子さん(『61歳なら「あともう1つ新しいことができる」と起業』)。3階建ての一軒家にそれぞれ独立した部屋を持ち、友人4人で暮らし始めてから5年。起業のきっかけにもなったという60代からのハウスシェアリングについて聞きました。

一軒家の建て替えが友人同居のきっかけに

編集部(以下略) 友人とのハウスシェアリングを始めたのはどういう経緯からですか。

村本理恵子さん(以下、村本) 5、6年前、友人と集まったとき「年を取ったらどうする?」という話題になりました。お母様を亡くされた方がいて、「荷物の整理が大変だった」と。50代は荷物の片付けも苦ではありませんが、年を取ると物が片付けられなくなる。荷物の山があっては残った人に迷惑をかけると思ったんですよね。元気なうちは1人でも問題ありませんが、最後まで1人で何でもできるわけではなく、病院に入院するにしても保証人がいる。みんな独り者で好きに生きてきたけど、「これからどうしようか」という話題になりました。

 そのとき、たまたま1人が、古くなった自宅の建て替えを考えていて、アパートにしようかなと言ったので、「だったら私たちが店子(たなこ)になって住むからシェアハウスにしよう」ということになりました。建て替えというきっかけがなければ一緒に住むことはなかったかもしれません。

―― 一緒に暮らしているのはどういう友人ですか?

村本 仕事を通じて親しくなった友人で20年、30年来の付き合いになります。本質的に仲はいいけれど、お互いに干渉しないので会うのも年数回でした。常に一緒に行動するような関係ではなく、会って特別なことを話すわけではないけれど、共感し合える。4人の中には友人の友人もいて、深い知り合いではありませんでしたが、「この人の友人なら大丈夫」という安心感はありました。

ベタベタした付き合いが苦手で「これまで人の家に遊びに行ったり、家に人を招いたりしたことはほとんどないんです」と話すピーステックラボ代表取締役の村本理恵子さん。女友達との共同生活は偶然のきっかけに思い切って乗ったことから始まった
ベタベタした付き合いが苦手で「これまで人の家に遊びに行ったり、家に人を招いたりしたことはほとんどないんです」と話すピーステックラボ代表取締役の村本理恵子さん。女友達との共同生活は偶然のきっかけに思い切って乗ったことから始まった

―― 最初に話が出てから一緒に住むまではどのくらい期間がありましたか?

村本 1年ぐらいですね。家の建て替えにそのぐらいかかりましたから。その間に設計も見させてもらいながら準備しました。ベッドルームは4人分作り、独立したスペースになっています。自分のスペースは自由に使ってもいいけれど、共有スペースに自分のものは置かない。お風呂は1つ、トイレは2つ。毎月家賃として決まった額を支払っています。

 私が一番夜型で朝9時くらいに起きて、深夜2時、3時に寝る。お風呂は入る時間を決めているので気兼ねなくゆったり入れます。4人の生活時間が違うので、あまり顔を合わせないですね。