資産形成やキャリアの構築に精を出しても、思わぬトラブルに巻き込まれて人生の計画が大きく狂ってしまうことがあります。被害者の多くが口にするのは「まさか自分が…」という言葉。詐欺や消費者トラブルを未然に防ぐにはどうすればいいのか。自分で自分の身を守る術を専門家に聞きました。

 詐欺のニュースを見聞きするたびに、「親が被害に遭ったらどうしよう」と心配になるARIA世代も多いのでは? 特に「還付金詐欺」「オレオレ詐欺」「架空料金請求詐欺」といった、不特定多数の人に電話やメール、はがきなどで連絡を取り、対面することなく現金などをだまし取る特殊詐欺は、高齢者を中心に被害が広がっています。防犯アドバイザーの京師美佳さんに、親を狙った特殊詐欺を防ぐために子どもができる対策を聞きました。

親を高齢者扱いするのはNG

編集部(以下、略) 警察庁によると、2021年に特殊詐欺の被害に遭った人のうち、65歳以上の割合は88.2%(法人被害を除く)で、多くが女性の被害です(68.7%)。自分の親、特に母親が詐欺被害に遭うのを防ぐために、子どもにできることは何でしょうか?

京師美佳さん(以下、京師) 還付金詐欺、オレオレ詐欺、架空料金請求詐欺といった手口ごとの対策も必要ですが、共通する対策としては、日ごろから親子でしっかりとコミュニケーションを取り、何でも相談し合える関係をつくっておくことが重要です。

 とはいえ、急に電話やLINEで「高齢者を狙った詐欺が多いから気を付けてね」「詐欺被害に遭わないように○○したほうがいいよ」と伝えればいいわけではありません。

 自分が親にアレコレ言われると「もう子どもじゃないのだから放っておいて」と感じるのと同じで、親も子どもに注意を促されると、「子どもに言われるほど年は取っていない」と思ってしまい、本気で対策を講じなくなる可能性があります。ですから、親を高齢者扱いすることと、唐突に詐欺の話をすることは避けたほうがいいですね。

―― 親のプライドを傷つけないようにしながら注意を促すためには、どのようなコミュニケーションを取ればいいのでしょうか?

「恥ずかしいから相談できない」を避けるには?

京師 親には、老若男女関係なく誰でも被害に遭う可能性があると伝えることが大切です。「今は詐欺の手口が巧妙だから、年齢も性別も関係なく詐欺には気を付けたほうがいいよね」といった形で、対等な目線で話すようにしましょう。

 そしてあくまでも世間話として話すことがポイント。たとえ別々に暮らしていても、普段から電話やLINEで「この前○○に行ってきた」というような何気ない会話ができていると、親が「これって詐欺?」と不安になったときに、「ちょっと子どもに聞いてみよう」と迷わず連絡を取ることができます。

 高齢者が詐欺に遭いそうになったり、実際に被害に遭ったりしたときに誰にも相談できないのは、恥ずかしいからです。「詐欺を見抜けなくて恥ずかしい」と思わせないためには、普段から何気ない会話を積み重ね、ささいなことでも気軽に相談し合える関係性を築いていくことが大切です。

―― では、20年と21年を比較して認知件数(警察が事件の発生を認知した件数)が増加している還付金詐欺、オレオレ詐欺、架空料金請求詐欺といった個別の手口には、どう対応すればいいでしょうか?

特殊詐欺の被害に遭わないために、親子でできる対策は?