資産形成やキャリアの構築に精を出しても、思わぬトラブルに巻き込まれて人生の計画が大きく狂ってしまうことがあります。被害者の多くが口にするのは「まさか自分が…」という言葉。詐欺や消費者トラブルを未然に防ぐにはどうすればいいのか。自分で自分の身を守る術を専門家に聞きました。

 金融詐欺というと頭に浮かぶのは、オレオレ詐欺を筆頭とする高齢者を狙ったもの。しかし、最近では20代の女性が詐欺被害に遭って自死に追い込まれたり有名人が投資詐欺に遭い社会的信用を失ったりというニュースをよく聞くようになりました。SNSやマッチングアプリなどを通した特殊詐欺も増え、その被害者は若年層にも広がっているといいます。

 「まさか自分が、と思っている人でも注意したほうがいい」と話すのは、金融商品取引被害、投資取引被害に明るい荒井哲朗弁護士。近年の詐欺被害の実態や予防対策について話を聞きました。

まさかパン教室で投資詐欺

編集部(以下、略) 近年、若年層の金融詐欺被害についてよく耳にするようになりました。荒井さんのところに相談に来る被害者も若年化していますか?

荒井哲朗さん(以下、荒井) そうですね。高齢者の被害がやや減ってきていて、20〜60代の被害は増えているように感じます。昔は電話が入り口でしたが、今はSNS、マッチングサイトなど、ネットやアプリが入り口になることも増えましたから。

―― 働き盛りの40〜50代が遭いやすい金融詐欺にはどのようなものがありますか?

荒井 FXや暗号資産など自動売買ができて、「毎月3〜5%などの配当が得られる」というような高配当をうたう投資被害に遭う人が増えています。また、第三者を勧誘することでボーナスが得られる「マルチ商法」的な仕組みを併用したものもあります。

 特に40〜50代女性が遭いやすいマルチ商法は、セミナー系が多いですね。昔からマルチ商法といえば、健康食品や化粧品などの商材が多かったですよね。そういった商材のセミナーに誘われて行くと詐欺だったという。今は、「物なしマルチ」というのですが、金融商品に投資させて、人を誘うと配当の何%かが戻ってくるという仕組みです。

―― 今、被害に遭いやすいセミナーにはどんなものがあるのですか?

荒井哲朗 あおい法律事務所 代表弁護士
荒井哲朗 あおい法律事務所 代表弁護士
あらい てつろう/早稲田大学政治経済学部卒業後、2001年に弁護士登録。03年に金融商品取引被害、投資取引被害などの解決を得意とするあおい法律事務所を設立。数多くの被害弁護団に参加し、講演や執筆など活動は多岐にわたる

荒井 資産運用セミナーなどのマネー系が多いですね。人に誘われて行くケースもあれば、メルマガやSNSで流れてきたものに参加して被害に遭うこともあります。セミナーではないですが、パン教室などの習い事で被害に遭った人もいました。

―― パン教室で、ですか!?