仕事で感じたモヤモヤ、予期せぬ逆境、好きで続けてきたこと…さまざまな出来事がきっかけとなって、それまでとは違う仕事の世界に飛び込んだ人たちがいます。思ってもみなかった方向に一歩を踏み出すことに不安はなかった? 新しい世界は自分にどんな変化をもたらした? 多種多様なキャリアチェンジを経験した人たちの話から、次のステージを見つけるヒントを探っていきます。

50代以降をどう生きるか考えていた

 58歳で始めたインスタグラムが人気となり、白髪を生かしたプラチナヘアのモデルとして活躍する藤原民子さん(62歳)。通算30年勤めてきた化粧品会社を定年前に辞め、自分らしい新たな道を踏みだしました。SNSの発信だけでなく、スタイルブックの出版やブランドのコアモデルなど、輝く60代を生きる藤原さんは、次のステージをどうやって見つけたのでしょうか。

 「50代後半の頃、この先どう生きていこうか考えていたんですよね」という藤原さん。高校卒業後に化粧品会社に就職。結婚して一度は辞めたものの離婚後、BA(ビューティーアドバイザー)として復職し、同じ会社で通算30年働いてきた。「契約社員としての定年は65歳です。でも、そこまで勤める気持ちにはなれませんでした」。定年まで勤めた先輩たちは、ドラッグストアで同じような仕事をするか、家でまったり過ごすか。「どっちもしたくないなと思って」

ふじわら・たみこ/1959年、山梨県生まれ。高校卒業後、化粧品メーカーに勤め、結婚退職。離婚後、復職して美容部員として勤務。18年、SNSをきっかけに雑誌「素敵なあの人」や化粧品会社shu uemuraなどのモデルとして活躍。19年からショップチャンネルでエイジレスブランド「タミ・ブラーマ」のコアモデルに。22年3月に初の著書『60代から輝く! ファッション・メイク・生活スタイル』(池田書店)を出版
ふじわら・たみこ/1959年、山梨県生まれ。高校卒業後、化粧品メーカーに勤め、結婚退職。離婚後、復職して美容部員として勤務。18年、SNSをきっかけに雑誌「素敵なあの人」や化粧品会社shu uemuraなどのモデルとして活躍。19年からショップチャンネルでエイジレスブランド「タミ・ブラーマ」のコアモデルに。22年3月に初の著書『60代から輝く! ファッション・メイク・生活スタイル』(池田書店)を出版

正社員登用は不採用、準備を始めるきっかけに

 30代で復職してからBAとして懸命に働いてきた藤原さん。売り上げの成績もよく、社内の販売コンクールで優勝してご褒美に海外旅行をプレゼントされたこともあった。「お客様がきれいになって、喜ばれるのがうれしかった。出会う人に恵まれたから今まで頑張ってこられたけど、自分のことはあんまり大事にしてなかったかもしれませんね。やりたいことはどこか我慢していた

 50代で正社員登用試験を受けたが、最終面接で不採用に。実績もあり、年齢は問わないという条件だったので、もしかしたらと思ったが、「あ、会社は結局のところ年齢なんだなと思ったんですよ。50代後半ですから、当たり前といえばそうなんですけど。実績を残してきたからって認められるわけじゃない。じゃあ、分かった。自分で新しいことを始めようと」

 当時、藤原さんにはつらい体験もあった。53歳で再婚した夫が、入籍して2週間後に病気で他界。これからの人生を一緒に過ごそうと思っていた矢先の出来事だった。「突然でしたよね。そこから立ち直れたのは、声をかけてサポートしてくれる友人がいたことと、毎日の仕事があったから。人と話しているとその瞬間は忘れられる。友人と仕事に助けられました。だから、生きている時間を大切にしなくちゃと思ったんです」。

 このままでは終わりたくない。定年後も同じ仕事をしたくないと思い、勤めながら準備を始めた。「メイクのことを自分でもっと勉強しようと思って、いろいろなセミナーに行き始めました。メイク以外にもブログの書き方を教えてくれるセミナーに行ったり、インスタグラムについて教えてもらったり。初めてブログを書いたのは57歳のとき、翌年はインスタグラムも始めました。向いているかどうかは分からないけど、とりあえずやってみた。インスタも最初は食べたお料理の写真を上げるだけでしたけど」

 転機になったのはインスタグラムに投稿した1枚の写真だった。

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