ウクライナ情勢や急速な円安を背景に物価が上昇する中、2022年度の公的年金支給額は昨年度に続き引き下げられました。少子高齢化が進む現在、給付水準はさらに下がっていくでしょう。老後の経済的な不安と向き合うには、60歳以降も働く未来を真剣に考えたほうが良さそうです。すでにそんな生き方をしている人、視野に入れている人たちを取材しました。

 人生後半戦のシフトチェンジを考えるとき、思い切って会社を辞める決断をする人もいますが、「会社に勤めながら60歳以降のためのチャレンジができる」と提案するのはグロービス経営大学院大学などで講義を行うビジネスプロデューサーの松田充弘さん。『会社を辞めない起業』の著者、松田さんに会社員のうちに実行できることを聞きました。

60代以降でも選ばなければ仕事はあるが…

 「今は少子高齢化で働き手が不足していますから、真剣に探せば60代でも本当に多くの仕事があります。例えば、家の近くにあるコンビニや飲食店でもほぼ常時、求人しています。でも、自分の人生後半をかける仕事に関しては手軽に働けること以上に、本当に自分に合った仕事とは何かを考えるべきではないでしょうか」と松田さんは問いかけます。

 「もし、マネーファーストではないなら、会社員のうちに準備を始めたほうがいい。今は副業が当たり前の時代です。会社に勤めながら60歳以上も続けたいことにチャレンジをして収入がプラスアルファで得られるならそれに越したことはありません」

松田充弘 ビジネスプロデューサー
松田充弘 ビジネスプロデューサー
まつだ・みつひろ/1971年生まれ。Next Action代表取締役。大学卒業後、マイカル(現イオンリテール)入社。人材派遣会社を経て、2002年に日本初のパートタイム人材サービス会社「ビースタイル」を共同創業。14年に同社を離れ、現職。これまで13事業の新規立ち上げを行い、すべてが現存事業として展開。グロービス経営大学院大学客員准教授としてリーダーシップ論の講義を行う。著書に『会社を辞めない起業』(日本実業出版社)

オフタイムの過ごし方が60歳以降を変える

 60歳以降に向けたチャレンジを始めるために、具体的に何から始めればいいのでしょうか。「まず、今の仕事を定時で終わらせることです。定時では帰りにくい雰囲気や習慣があるかもしれませんが、そのワークスタイルを変えてください。仕事をしているオンタイムではなく、仕事をしないオフタイムに何をするかで、60歳以降の生産性が変わります」。1日8時間稼働したら、それ以外は何に使うか。「オンタイムは効率よくスケジューリングをしていても、オフタイムは気ままにゆっくり過ごしたいという人もいます。でも、オフタイムこそプランニングすることが大事なんです」

→ 1 定時で帰ることを習慣にする

 次に必要なのは、特に大企業に勤める人が持ちやすいマインドセットを変えることだと言います。

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