ウクライナ情勢や急速な円安を背景に物価が上昇する中、2022年度の公的年金支給額は昨年度に続き引き下げられました。少子高齢化が進む現在、給付水準はさらに下がっていくでしょう。老後の経済的な不安と向き合うには、60歳以降も働く未来を真剣に考えたほうが良さそうです。すでにそんな生き方をしている人、視野に入れている人たちを取材しました。

 新卒で入社した大手外資系メーカーに約15年勤務した後、グローバル企業を中心に数回転職しながらキャリアを積んできた残間朝子さん(51)。特に新卒入社した外資系企業は、個人の意欲が尊重される環境だったため、さまざまな職種にチャレンジしてきたそうだ。

 社内におけるプロジェクトマネージャーや営業、技術職などを経験する中、35歳のときに「これだ!」という仕事に出合った。

 「それが人事の仕事でした。私はそれまで社内で技術系のトレーニングを担当していたこともあり、リーダーシップや社員が生き生きと働ける環境の重要性を実感していたので、社員の育成にとても興味を持っていました。このときに『人事をキャリアの軸にする』と決めたんです」

残間朝子 ストラテジックパートナー
残間朝子 ストラテジックパートナー
グローバルに事業を展開する外資系メーカー3社、大手日系メーカー1社で営業やデリバリーでのPL(Profit & Loss)責任者、プロジェクトマネージャーなど多彩な経験を積む。35歳のときに人事にキャリアチェンジするため転職し、以降人事を専門に活躍。2022年、転職先の外資系スタートアップ企業の日本撤退を受け失職。その後独立し、現在「従業員エンゲージメント向上サポーター」として複数の企業の人事部門を支援している。

 もともと勉強が好きだった残間さんは、人事の専門性を高めるべくインプットを開始。人事関連のセミナーなどに積極的に参加し、学びを深めていった。

 その過程で、残間さんは会社員としてのキャリアについて考えるようになり、この頃から定年後の働き方を思い描くようになったと話す。

 「人事として会社組織全体を見つめたとき、会社員である限り定年後もずっと働き続けるのは簡単なことではないと気づきました。60歳を過ぎても定年の引き上げや再雇用などで働く機会はありますが、会社の業績によっては雇い止めのリスクもある。年金の受給額も下がり続けている中、老後の生活を年金だけに頼るのも不安でした。できるだけ長く働くにはどうすればいいかを考えるようになったんです」

 残間さんが出した答えは「個人事業主になる」こと。しかし、なかなか一歩踏み出すことができなかったという。

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