35歳転職限界説は過去の話、深刻な人手不足で、40代以降にも転職チャンスは拡大――。終身雇用が常識だったバブル世代も、厳しい就活を経験した氷河期世代も、転職の一歩を踏み出すなら今だと言う声がある。一方で「誰もが簡単に転職できる訳ではない」という指摘も。40代以降で転職できる人の共通点とは? 転職の最短ルートは? 「40歳からの成功する転職」を徹底的に考えます。

 大量の定年退職者を送り出した企業は、この10年間、中途採用者で人員不足を補ってきた。ベテランの男性社員がいなくなった穴を埋めるのは難しく、40代女性が注目されている。とはいえ、誰でも簡単に採用される訳ではない。今、どんな人が求められているのか、面接に強いのはどんな人か。大企業など170社もの人事制度に関わってきた組織・人事コンサルタントの秋山輝之さんに聞いた。

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 これだけ人手不足の話をしたんだから、じゃあいつでも誰でも望む転職ができるかと言うと、それはまた別の話です。結構勘違いされやすいのですが、自分の転職したいタイミングで転職している人は20%くらいです。残りの80%くらいは、早期退職制度の利用や、家族や自分が体調を崩したタイミングでの転職で、自発的な転職はあまりないのが現状です。

ベクトル副社長で組織・人事コンサルタントの秋山輝之さん
ベクトル副社長で組織・人事コンサルタントの秋山輝之さん

企業は「○○○○○○をやってくれる人かどうか」で選ぶ

 また、転職が初めてだという方に多い勘違いですが、自分の職歴を見て採用担当者が「この人にはこんな仕事をしてもらいたい」と感じて採用を決めていると思っている。現実的には、企業は誰かの退職を穴埋めするために採用するので、「前任者の仕事をやってくれる人かどうか」で選んでいます。

 新卒採用なら「君はこういう長所があるからこういうことができるんだね」という採用の仕方もあるが、転職の場合は「前任者の後任」が基本になり、前任者とは定年退職した人や、皆さんと同じ40代の女性が多いのです。この新卒採用との違いを意識して転職活動している人って、結構少ないです。

 加えて、企業はスキルマッチングをさほど意識していません。「こういう人が欲しい」と思っても見つからない、と諦めています。技術系ですらそうです。例えば昨年、ある企業が多額の予算を使ってある製品の技術者を採用しようとしましたが、1カ月たった頃、担当者は気づいてしまったんです。「日本にはその製品に欠かせないパーツを作ったことがある人が1人もいない」という事実に。

 これは極端な例かもしれませんが、このようなことが相次いだため、今の人事は、前任者の仕事と全く同じ仕事ができる人や、求める理想像にぴったりの人材はいないことを理解して採用活動を行っています。

 「転職」と「離職」との違いについても説明しておきます。