今や2人に1人ががんに罹患(りかん)するリスクがあるといわれる時代。精神的にも、経済的にも、仕事を続けながら治療することは大切です。自分が、部下が、家族ががんになって働き続けるとしたら、どんな支えが必要になるのだろう――。がんサバイバーが働きやすい職場とは、お金や保険はどうするか、誰に相談したらいいかなど、がんと共に働くための情報を集めてお届けします。

 がんへの不安は、闘病と並んでお金の不安が大きいもの。「がん治療は高額」というイメージが強いため、目を背けていませんか? 定期的に検診を受けることと、お金について情報を得ておくこともがんの備えになります。自身も乳がんを経験し、がんの経済的備えに詳しいファイナンシャルプランナー(FP)の黒田尚子さんに、詳しく聞きました。

視点1 がん治療にいくらかかるのか

―― がんで必要になるお金を、どのように備えればよいでしょうか。

黒田尚子さん(以下敬称略) がんとお金の問題について、考えなくてはいけない視点は3つあります。1つ目はがんの治療にいくらかかるか。今はがん治療も個別化しているので、一概にいくらとは言えませんが、以下の3種類に分けると考えやすいです。

がんの治療にかかる3種類のお金
(1)病院に払う医療費 / 診療、治療、入院費など
(2)病院に払うその他のお金 / 差額ベッド代、入院時の食事代の一部、先進医療、診断書作成料など
(3)病院以外に払うお金 / 通院の交通費、入院中の日用品、快気祝い、サプリメント、ウイッグなど

 医療費には、検査、診察、手術、入院など、いわゆる健康保険の対象になる医療費と、先進医療や、健康保険の対象にならない医療費があります。がんになったことがない人は(1)がすごくかかると思っていますが、がんになってみると、(2)や(3)に結構かかると実感します。

 地方から東京などに治療を受けに来る人は、通院のための交通費に加えて宿泊代もかかります。医療費以外の差額ベッド代や入院したときの食事代の一部、抗がん剤で髪が抜けたときのウイッグなどは、省くこともできますが、QOLを上げるために必要な費用ですよね。