今や2人に1人ががんに罹患(りかん)するリスクがあるといわれる時代。精神的にも、経済的にも、仕事を続けながら治療することは大切です。自分が、部下が、家族ががんになって働き続けるとしたら、どんな支えが必要になるのだろう――。がんサバイバーが働きやすい職場とは、お金や保険はどうするか、誰に相談したらいいかなど、がんと共に働くための情報を集めてお届けします。

 2018年4月に「がんと共に生きる」ための「がん共生プログラム」を立ち上げたポーラ。正社員、契約社員、パートなどを含む、全従業員をはじめ、委託販売契約を結ぶ約4万人のビューティーディレクターたちにも手厚い補助制度をもうけているのが特徴です。がんについてオープンに学び、語り合い、支え合える企業風土をつくりたい、という強い思いのもと、制度を整えたという。

がんと向き合い復職したオーナーの姿勢がきっかけに

―― 2018年にスタートした「がん共生プログラム」の内容を拝見しました。社員だけでなく、個人事業主という形で接客やサービスを行うサロンのビューティーディレクター(以下、BD)や、そのBDを束ねるショップのオーナー・マネージャー(以下、OM)に対しても手厚い対策をされており、なかなかこういった事例はないのでは、と驚きました。

経営企画部・片岡祐子さん(以下、敬称略) 当社は従業員約1600人(2019年12月末現在)をはじめ、約4万人にのぼるBD、OMという美容スペシャリストの皆さんに支えられている会社です。

 そもそもこのプログラムが立ち上がった背景として、前・代表取締役社長の横手喜一が、全国のポーラ店舗を視察した際に、がん治療と向き合いながら復職し、がん患者さんを対象に精力的にボランティア活動を行っているオーナーさんと出会ったのです。

 病院で入院中のがん患者さんに「ハンドトリートメント」をされているその姿勢に深く感銘を受けた横手前社長が、「企業として、がんに関わる制度を抜本的に見直そう」と声を上げ、プログラム作りが始まりました。2018年4月に「がん共生プログラム」がスタート。さらに、3カ月後の7月に、BDやOMを対象とした制度も動きだし、制度が整ったのが昨年で、ちょうど、走りだしたところです。