今や2人に1人ががんに罹患(りかん)するリスクがあるといわれる時代。精神的にも、経済的にも、仕事を続けながら治療することは大切です。自分が、部下が、家族ががんになって働き続けるとしたら、どんな支えが必要になるのだろう――。がんサバイバーが働きやすい職場とは、お金や保険はどうするか、誰に相談したらいいかなど、がんと共に働くための情報を集めてお届けします。

 がんになっても働き続けられる職場環境とはどのようなものでしょうか。日本のがん保険のパイオニアであり、「『生きる』を創る。」というブランドプロミスを掲げるアフラックは、社員に対しても、特にがんに着目した手厚い支援プログラムを整備しています。プログラムの整備に携わった人事部長の伊藤道博さんと、人事部健康推進室長の佐柳みすずさんに話を聞きました。

当事者の声に耳を傾けた結果、がん経験者コミュニティーの立ち上げへ

―― まずはがんに罹患(りかん)した社員に対する就労支援策の全体像と、その特徴をお聞かせください。

佐柳みすずさん(以下、敬称略) 2018年4月に、体系的なプログラムとして「がん・傷病 就労支援」を整備しました。その中身は、安心して必要な相談ができる体制づくり(=相談)、仕事と治療の両立のために新たに必要な制度と職場環境の整備(=両立)、早期発見のためのがん検診受診の徹底と禁煙推進(=予防)という、3つの柱で取り組みを進めるというものです。

 中でも特に重要なのが、がんを経験した社員によるコミュニティー「All Ribbons」の活動です。All Ribbonsは2017年12月に社内のがん経験者13名で発足し、現在は全国から参加する20代~50代の22名で活動をしています。

伊藤道博さん(以下、敬称略) 実はこのコミュニティーは、社内のがん経験者の声から生まれました。制度を整備しようと考えたときに、まずは罹患した社員一人ひとりに「会社にどういう支援をしてほしいか」と聞くところから始めたのですが、私は当初、両立支援制度とかお金のことに関する声が出てくると予測していたんです。ところが、一番多かったのは「仲間と語り合いたい」「病気になった人に自分の経験を伝えたい」という声でした。

 罹患(りかん)した事実を誰にも知られたくないという社員が思ったよりも少なかったのは、当社ががん保険の会社だということも影響しているとは思いますが、病気について話すことがはばかられない、キャリアに傷がつかないという会社との信頼関係があるのも大きいと思います。

佐柳 一般的には、こうしたコミュニティー活動では圧倒的に男性の参加が少ないそうで、それもキャリアへの影響を気にしてのことなのかもしれません。当社の場合はメンバーの男女比はほぼ半々(男性10名、女性12名)となっていて、社員の男女比を反映しています。