企業型確定拠出年金を導入する企業は増加し、老後のための資産形成を会社任せにする時代は終わっています。と同時に、ARIA世代にとっては退職金や年金の額がリアルに見えてきて、定年後の生活に不安を感じることもあるのでは。50代と40代のアプローチの違いに注目しつつ、今すぐ始めるべき資産形成のステップを紹介します。

 自分で年金をつくる制度としてすっかりおなじみとなったiDeCo(個人型確定拠出年金)ですが、興味はあるけれど、まだ始めていないという人、結構いるのではないでしょうか。今さらやるのは遅い? そもそも何がそんなにいいの? iDeCoのエキスパートである確定拠出年金アナリストの大江加代さんに、iDeCoのメリットや老後資金における位置づけについて詳しく聞きました。

iDeCoの節税メリット 使わないのはあまりに惜しい

編集部(以下、略) ずばり、40代、50代からでも、iDeCoは始めたほうがいいでしょうか?

大江加代さん(以下、大江) それはもう、使える人は使ったほうがいいと思いますよ。老後資金をためる手段としては、私はiDeCoが最強だと思っています。

 まず、掛け金が全額所得控除になりますから、節税効果が大きいです。個人年金保険の場合は掛け金をどんなにいっぱい積んだとしても、所得税は最大年4万円、住民税は年2万8000円しか控除できません。でもiDeCoなら、例えば企業年金がない会社員が拠出限度額まで積み立てたら、掛け金の年額27万6000円がまるごと課税所得から控除されます。所得税率が10%と仮定した場合、住民税(10%)と合わせて年間約5万5000円の税負担軽減効果があります。浮いたお金は翌年の積み立ての原資に回すこともできますし、これが5年、10年と積み重なったら、かなり大きいと思いませんか?

 また、運用で出た利益も非課税ですし、積み立てたお金を受け取るときも、一定額までは税金がかかりません。iDeCoを始めようかどうか迷っていると、それだけメリットを得られる期間が1カ月、2カ月と減っていくことになります。すごくもったいないと思います。

「老後が不安」なのに、自社の年金制度を知らない

―― 老後資金は心配だけど、iDeCoの手続きや商品選びの手間を考えると、なんだか面倒で重い腰が上がらない……みたいな人が多い気がします。特に会社員の場合は退職金や厚生年金もあるし、そこまで切実じゃないのかもしれません。

大江 セミナーなどでARIA読者世代の40代、50代の会社員の方たちに「老後について不安ですか?」と聞くと、大体お金のことが不安だと答えます。なのに、公的年金の受け取り見込み額がひと目で分かる「ねんきん定期便」を見ていなかったりするんですよ。自分の会社の退職金や年金制度をよく知らない人もびっくりするくらい多いです。

 恐らく会社員は、不安だと言いながらも、漠然と会社が何とかしてくれるという甘えがあるのかもしれませんね。年金を含む社会保険料や税金の支払いは会社が全部やってくれますし、毎月決まったお給料はもらえるので、今は面倒なお金のことと向き合わないで暮らせてしまいます。会社を離れたらそうはいかないのですが、ついつい先送りしてしまうのだと思います。

 老後のお金についての不安を解消するには、自分が60歳以降、いつから、いくらもらえるかを把握する。これが第一歩です。

40代、50代がiDeCoを始めるメリットはこんなに! 詳しくは、次ページから解説します
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