企業型確定拠出年金を導入する企業は増加し、老後のための資産形成を会社任せにする時代は終わっています。と同時に、ARIA世代にとっては退職金や年金の額がリアルに見えてきて、定年後の生活に不安を感じることもあるのでは。50代と40代のアプローチの違いに注目しつつ、今すぐ始めるべき資産形成のステップを紹介します。

 老後の資産形成を考えるときに、見直しておきたいのが家計の支出。漫然と支払っている無駄な出費がないか、一度チェックすることも大切です。節約の達人といわれるファイナンシャルプランナー、風呂内亜矢さんに家計費の見直しポイントについて聞きました。

住居費が手取りの2割未満だとお金がたまりやすい

編集部(以下、略) 家計の穴を塞ぐためには、どこから見直せばいいですか?

風呂内亜矢さん(以下、敬称略) 住居費、保険料、通信費、この3大固定費を減らすことが長期的に出費を減らすことにつながります。中でも最も大きいのが住居費です。住居費は一般的に手取りの3割が上限といわれますが、これはまさに「上限」で、お金のたまる家計は住居費が手取りの2割未満であることが多いのです。ですから、ここが落とせると老後資金もためやすくなります。

 持ち家の場合、まずは住宅ローンの借り換えを検討してみてください。1. ローンの残金が1000万円以上、2. 返済の残年数が10年以上、3. 今の金利と借り換えたい金利の差が1.0%以上――この3つをおおむね満たしていれば、借り換えの手数料を考慮しても返済額などトータルの支払いを減らせることが多いです。

住宅ローンの借り換えは、価格.comや金融機関のサイトなどでシミュレーションができる
住宅ローンの借り換えは、価格.comや金融機関のサイトなどでシミュレーションができる

風呂内 借り換えが可能だという裏付けが取れたら、現在借りている金融機関に金利を引き下げてもらう交渉をしてみるという方法もあります。その場合、返済が滞っている、転職して勤続年数が減ったなどの不利な状況がないことが原則です。逆に最初に借りたときより勤続年数が長くなっていれば有利に働きます。交渉がうまくいけば、登記簿の書き換えといった手続きや諸費用が不要なのでメリットは大きいですよ。

―― そんな交渉ができるのですね。知りませんでした。ただ住宅金利は低い水準がずっと続いている気がしますが……。

風呂内 基本的には20年近く低水準ですが、2016年にマイナス金利が導入されたタイミングでさらに下がっているので、それ以前に借りた場合はもっと低い金利での借り換えや交渉ができる可能性があります。金利1.0%の差はかなり厳しいかもしれませんが、ほかの2つの条件が大きく上回っている場合は検討の余地があります。

 また、長く低金利であることなどから一部の返済を前倒して行う「繰り上げ返済」はメリットが少ないという考え方があります。確かに、高い金利で借りているときのような大幅な利息の軽減効果は期待できませんが、生活費の1〜2年分以上の預貯金が手元にあるような人は、一部繰り上げ返済を検討してもいいでしょう。繰り上げ返済をせず、あえて手元に残した資金を運用して増やすことの成果は不確定ですが、繰り上げ返済を行うことで軽減できる利息は、その場で確定できるため、優先順位を考えながらも選択の余地があります。

―― 賃貸の場合でも何か検討できることはありますか?