企業型確定拠出年金を導入する企業は増加し、老後のための資産形成を会社任せにする時代は終わっています。と同時に、ARIA世代にとっては退職金や年金の額がリアルに見えてきて、定年後の生活に不安を感じることもあるのでは。50代と40代のアプローチの違いに注目しつつ、今すぐ始めるべき資産形成のステップを紹介します。

 少しずつ「定年」という言葉にリアリティーを感じ始め、「ねんきん定期便」に具体的な金額が記載されるようになると、実際にはリタイア後にいくらくらい必要で、年金ではいくら足りないのか気になりますよね。「とりあえず2000万円ためる」でいいの? 超低金利時代にどうやって資産形成すればいい? 数々の疑問を日経マネー発行人の大口克人さんにぶつけてみました。

編集部(以下、略) 40代、50代の資産形成はどのように考えたらよいですか?

大口克人さん(以下、大口) 資産形成やお金に関する知識を身に付けるのは家を建てるようなものだと考えてください。家を建てるには土台があって柱があって、そこにレンガで壁を作ってできるんです。個別の金融商品はレンガのようなもの。人生全体の設計図である土台や柱を見ずにレンガだけ見ていると分からなくなる。

 全体像が分かると何が必要か見えてきます。そこでライフスタイル別に、人生とお金について時間の流れで見ていったのが以下の図です。いつごろ、どんなお金がかかってくるのか知っておくことが大事です。

いつごろ、どんなお金が必要になるのかを見直す

大口 全体的に、若いうちはお金は自由に使えますが、使える額そのものは小さい。年齢とともに収入は増えますが、住宅ローンや子どもの教育費などで出費が増えます。自由に資産形成に回せるお金がピークになるのが退職を前にした一時期。その後収入は減っていき、医療や介護の費用が気になり始めます。

20代に結婚し共働き、30代前半で出産したケースでは、子育て期にはお金の余裕がないが、収入が増える時期に大きな支出が終わり資産形成に回せる
20代に結婚し共働き、30代前半で出産したケースでは、子育て期にはお金の余裕がないが、収入が増える時期に大きな支出が終わり資産形成に回せる
共働き・子どもありでも近年増えている晩婚・晩産のケースでは、若い時期に大きな支出の波が来ないので油断していると、後半であらゆる支出が重なってくる
共働き・子どもありでも近年増えている晩婚・晩産のケースでは、若い時期に大きな支出の波が来ないので油断していると、後半であらゆる支出が重なってくる
単身世帯は子どもの教育費がない分支出は押さえられるが、1人分の収入で老後の生活費をまかなうのは大変なので、個人年金などでしっかり備えたい
単身世帯は子どもの教育費がない分支出は押さえられるが、1人分の収入で老後の生活費をまかなうのは大変なので、個人年金などでしっかり備えたい

大口 人生の三大支出と呼ばれる「住宅ローン」「教育資金」「老後資金」を取り上げても、一人ひとりのライフプランによって違いが大きいです。20代で結婚・出産した人は、ある程度負荷がかかる時期がばらけていますが、晩婚晩産の場合は人生の前半に支出の大きな山がなくて油断していると、後半にピークが固まってしまいます。

 シングルの場合は教育資金が必要ないので、安定的に貯蓄や投資に回しやすいといえますが、老後は自分1人分の年金で暮らすために生活水準を見直し、不足分を把握して余裕を持って資金を作っておく必要があるでしょう。また、DINKSの世帯で2人とも厚生年金に加入している場合は、年金だけでも生活費をかなりカバーできるので最強といえるのではないでしょうか。

―― 人生の全体像が明らかになってきたら、資産を構成する「レンガ」をどう組み立てればよいのでしょう。