今、ビジネスパーソンに最も必要なのは、英語力でも会計力でもありません。あらゆる業種や職種ですぐに使える“究極のポータブルスキル”である文章術です。相手に意図が伝わる文章術、心を揺さぶるスピーチ術、報告書を1枚にまとめるコツ……その手があったか! と膝を打つ、誰でもまねができるテクニックをお届けします。

 「ルールさえ守ればロジカルな文章が書ける。そしてルールを守れば、必然的に書くべき情報、省くべき情報が見えてきます」。こう話すのは、『「で、結局なにが言いたいの?」と言わせない ロジカルな文章の書き方 超入門』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者で、研修講師を30年以上務める別所栄吾さん。読み手を困惑させないシンプルな文章、ロジカルな文章を書くための4つの基本ルールを聞きました。

自分が思うほど、ロジカルに書けていない

編集部(以下、略) ARIAの読者はほとんどが40代以上です。社会人経験も重ね、「ロジカルな文章を書けている」と自負している人が多そうです。

別所栄吾さん(以下、別所) 残念ながら、仕事の経験が長いからといってロジカルな文章や明解な文章が書けるとは限りません。私は30年以上、ロジカルライティングの研修をしています。受講者が書いた文章やまとめた資料を添削指導していますが、何を伝えたいかが分かりづらい文章を書く人は多数います。説明を聞いてようやく趣旨が分かるような文章は、いい文章とは言えません。

 例えば、30秒で終わるような話だったら、思いついたまま話したり書いたりしても相手に意図は伝わるでしょう。ですが、30秒を超えると相手は理解できなくなって情報がこぼれていき、「一体何が言いたいのか分からない」となってしまうことがあります。内容を考える段取りと文章を書くときに意識する段取りは、順番が正反対です。思考のプロセスをそのまま文章にせず、相手に伝えるべき結論は何なのかをしっかり考え、整理してから書く。まずはこのことを認識してください。

「考える」「書く」 段取りの違い

「考える」  単語▶文▶要約文▶結論

「書く」  結論▶要約文▶文▶単語

―― ロジカルな文章が書けていない人は、実は多かったんですね。

別所 そうです。テニスや野球といったスポーツ全般を思い浮かべてください。自分の経験則や見よう見まねで球を打ち返すことくらいはできるはずです。ですが、その先の上達は我流ではなかなか難しい。自分より後から競技を始めた人でも、コーチに習えば我流の人よりめきめき上達する可能性が高い。理由は、上達の秘訣やセオリーを学べるからです。

 同じように、ロジカルに文章を書くためのセオリーもあります。文章が分かりづらい人は、そのセオリーを知らない人が多い。そのルールを守りさえすれば、読み手に頭を使わせずにすむ文章が書けるようになります。

―― 誰でもすぐにまねができるということですね。早速そのルールを教えて下さい。

次ページ以降で、4つのルールを解説する
次ページ以降で、4つのルールを解説する

別所 1つ目は、30秒で読み切れない文章やメールには、必ず要約を先頭に書くことです。先ほども申し上げたように、30秒で読み切れるメールや文章なら、自由に書いても問題はないでしょう。文字数にして300字、7~9文程度。これを超える場合、重要なのは最初だけ読めば概要が理解できる文章になっているか、です。

―― メールでも? 要約を先に置くとはどういうことでしょうか。