仕事をしていれば人間関係でうまくいかないことはたくさんある。とはいえ、若手社員でもなければ、立場もある。思いのままに愚痴を言ったり、ぶつかったりするだけで解決できないことも山ほど…。そりが合わない上司や同年代からの嫉妬、セクハラ・パワハラ…。読者の声をもとに、専門家取材や先輩経験談を通して、ARIA世代だからこそのスマートなかわし方を探ります。

目の前の敵と戦うより、リーダーはビジョンを示せ

 3度の起業経験があり、多数の企業のスタートアップ支援を行っている、ウィズグループ社長の奥田浩美さん。自身も起業をしてすぐの26歳のときは、人間関係で失敗を経験したこともあったという。そこから学んだことは「すべての人には、“正義”があり、人を変えようとすることは難しい」ということだ。

ウィズグループ代表取締役。インド国立ボンベイ大学大学院社会福祉課程修了。1991年にIT特化のカンファレンス事業を起業。2001年に株式会社ウィズグループを設立。2013年には過疎地に「株式会社たからのやま」を創業し、地域の社会課題に対しITで何が出来るかを検証する事業を開始。委員:情報処理推進機構(IPA)「IT人材白書」検討委員、「医療系ベンチャー振興推進会議」委員等、 著書に『ワクワクすることだけ、やればいい!』(PHP出版)ほか
ウィズグループ代表取締役。インド国立ボンベイ大学大学院社会福祉課程修了。1991年にIT特化のカンファレンス事業を起業。2001年に株式会社ウィズグループを設立。2013年には過疎地に「株式会社たからのやま」を創業し、地域の社会課題に対しITで何が出来るかを検証する事業を開始。委員:情報処理推進機構(IPA)「IT人材白書」検討委員、「医療系ベンチャー振興推進会議」委員等、 著書に『ワクワクすることだけ、やればいい!』(PHP出版)ほか

 「人が育った背景はさまざま。たまたま同じ会社でデスクを並べているだけで、それぞれ正義は違う。そう思えば、誰かと衝突しそうになっても、『そもそも正義が違う』と思うことで楽になれるでしょう。今はいろいろな人が活躍する時代だから、いろいろな背景の人がチームにいる方が、会社の発展にもつながると思いますよ」

 奥田さんは、起業家としての振る舞いや、会社や社内のチームの在り方について、西遊記の「三蔵法師」をたとえにしてよく話をする。三蔵法師が孫悟空や猪八戒、沙悟浄を従え、多くの困難を乗り越えながら西へと向かって経典を持ち帰るという物語。

 「三蔵法師が従えているメンバーは、目の前に次々と現れる妖怪と戦います。そんな苦境でも、馬に乗った三蔵法師が『西に経典を取りに行くぞ』とひたすら言い続けたらから、成功したんですよね。それは企業でも同じこと。誰かがリーダーシップを取り、ビジョンをひたすら示していく必要があります」

 目の前に「敵」=難題や人間関係のトラブルが次々現れるので、目の前の敵と戦うことに一生懸命になりがちだが、「ARIA世代でチームのリーダーになる人は、部下と一緒になって目の前の敵と戦うのではなく、大きなビジョンを示していきたい」と奥田さん。そのビジョンに共感できない人は、異動したり、会社を辞めたりするかもしれない。「それでもリーダーがビジョンを明確に示すことで、仕事も成功しますし、人間関係もラクになっていくのではと思うのです

 次ページからは奥田さんが失敗を通じた人間関係で学んだことや、起業して離れていく人や近づいてくる人への対処の仕方、人間関係がうまくいく組織メンバーの集め方、そして起業家としてSNS上の人間関係をどうとらえるかなど、具体的な経験やノウハウを聞いていく。