かつてはお金持ちの特権だった別荘ライフや海外移住、海外留学。バブル崩壊と経済停滞の30年を経て、庶民クラスにも手の届く2拠点生活や、海外移住・留学の穴場カントリーが、注目されています。「いやいや、私は都心を離れたくないので短時間勤務で働きたい」など、ARIA世代が描くわがままな「未来妄想図」を実現するにはいくら必要なのか、取材しました。

 「仕事のギアを少し下げて、自由な時間を持ちたい」「キャリアを生かしつつ、限られた時間だけ働きたい」「……でも、正社員としての安定はキープ!」――長年キャリアを重ねてきたARIA世代の中には、そんな「現実的・わがままライフシフト」を望んでいる人も多いはず。

 「転職市場では、2012年ごろから時短正社員の企業ニーズは右肩上がりです。職種や条件はまだ限られていますが、人手不足や働き方の多様化といった背景から、今後も増えていくと考えられます」と話すのは「時短×ハイキャリア」の人材サービス「スマートキャリア」などを運営する、ビースタイルのスタッフィング事業本部統括部長の伊橋俊一さん。

 時短正社員として働くならどんな職種が狙い目? 気になる給料は? 40~50代ARIA世代でも本当に求人はある? 今後身に付けておくべきスキルは? そんな時短正社員にまつわる疑問を、まずは伊橋さんにぶつけました。4ページ目では、ビースタイルからの紹介で時短派遣社員としてベンチャー企業のホワイトプラスへ。今では時短正社員・時短管理職歴3年の田中雅子さんに、時短管理職のメリット・デメリットを聞きました。

ビースタイルに寄せられる時短正社員の求人が多い職種、時短正社員の給料の傾向についての詳細は、2ページ目以降で解説する
ビースタイルに寄せられる時短正社員の求人が多い職種、時短正社員の給料の傾向についての詳細は、2ページ目以降で解説する
ビースタイルに寄せられる時短正社員の求人が多い職種、時短正社員の給料の傾向についての詳細は、2ページ目以降で解説する

「時短ニーズ」は右肩上がり、その理由は?

―― 最近の転職市場では、時短正社員のニーズはどれくらいあるのでしょうか?

伊橋俊一さん(以下、敬称略) 時短勤務を希望する働き手の数と、企業の求人数は、ともに2012年ごろから右肩上がりの状態です。ビースタイルでは、2012年に「時短×ハイキャリア」の人材派遣紹介サービスをスタートしました。特にここ3年ほどで一気に企業側の求人数が拡大。2018年から、時短正社員に特化した紹介サービスも本格的に開始しました。

―― 働き手と企業側、それぞれが時短正社員を求める理由は?

伊橋 時短正社員として働きたい人の理由としては、親の介護や子育てといった家庭の事情が多いです。また、既に現在時短で働いているものの、キャリアがうまく生かせていないと考えている人や、勤務先では時短勤務の制度が利用できなくなるため転職したい、といった人もいます。

 一方、企業側のニーズが増えた理由の1つは、ここ数年で働いた「時間」ではなく「成果」を重視する考えが広がってきたこと。ITやデジタル産業が中心となりつつある今は、新しい何かを生み出す力や、問題を解決する能力が求められています。加えて日本全体が人手不足という背景から、企業が「良い人材が確保できるなら時短でも構わない」という考え方へシフトしていることが挙げられると思います。

―― 企業から見た場合と、働き手から見た場合、それぞれ時短正社員のメリットを教えてください。

伊橋 働き手から見た時短正社員のメリットは、まずは、正社員として賞与や福利厚生制度などがあること。さらに、時短という働き方でありながらも、責任あるポジションが得られる可能性もあること。企業側から見たメリットも同様に、これまで主流だった時短派遣社員から踏み込んで、より責任ある仕事が任せられるといった点が挙げられます。

―― 時短正社員を歓迎しているのは、どんな企業が多いのでしょうか。実際にARIA世代に対するニーズはあるのでしょうか?