かつてはお金持ちの特権だった別荘ライフや海外移住、海外留学。バブル崩壊と経済停滞の30年を経て、庶民クラスにも手の届く2拠点生活や、海外移住・留学の穴場カントリーが、注目されています。「いやいや、私は都心を離れたくないので短時間勤務で働きたい」など、ARIA世代が描くわがままな「未来妄想図」を実現するにはいくら必要なのか、取材しました。

 「いきなり移住には踏み切れないけど、平日は東京、週末は自然あふれる田舎でのんびり暮らしたい」――ARIA編集部員のみならず、こんな妄想(理想のライフシフトを妄想した<ある日の編集会議から>)をしたことがあるARIA世代は多いはずです。

 かつては「お金持ちや時間に余裕があるリタイア組の特権」のように思えたこの妄想ですが、「最近は、住居の選択肢が増え、安価に始められるサービスも登場したことなどから、都心と田舎の2つの生活=2拠点生活(デュアルライフ)を実現しやすくなっています。2拠点生活を送る方に実施したアンケートでは、7割以上が生活の満足度が上がったと答えていました」(2拠点生活に詳しい、リクルート住まいカンパニーSUUMO副編集長 笠松美香さん)

 とはいえ、「2拠点生活を充実したものにするには、『ステップを踏むこと』が必要です」と笠松さんは言います。夢の2拠点生活を実現するには、まず何から始めるべき? 費用の目安は? お勧めのエリアは? 2拠点目の近所付き合いは必要? 住民税はどうなる?――気になるあれやこれや、全部に答えてもらいました!

2ページでは、最も気になる「2拠点目の住居費」の目安をケース別に紹介
2ページでは、最も気になる「2拠点目の住居費」の目安をケース別に紹介

2拠点生活は、もう夢や妄想じゃない!

―― 「2拠点生活」を送る人が増えている理由は何でしょうか?

笠松美香さん(以下、敬称略) 1つが都心回帰からの反動。共働き世帯の増加で、通勤や子育ての利便性を第一に考えて、都心の駅近マンションを選ぶ人が増えています。そうした都市生活者が、都会では得られない心のゆとり、自然やコミュニティーとのつながりを地方での暮らしに求めているのです。

 もう1つが、2拠点目を確保する方法が多様化したこと。以前は「豪華な別荘を買う」以外に選択肢がありませんでしたが、今は、シェアハウスやゲストハウスなどに「泊まる」、通常の賃貸物件を「借りる」、古民家を単独で「買う」、または共同で買って「シェアする」などの方法で、安く拠点を構えられます。シェア文化の浸透、地方物件の価格低下、空き家の増加などを受け、富裕層やシニア層の特権だった2拠点生活が、より身近になってきたのです。

―― 2拠点生活者に多いのは、どういうタイプの方ですか?

笠松 私たちは2拠点生活者を次の6つに分類しています。

 拠点を持ち、スポーツや農業などの趣味を追求したい【1】趣味満喫型、都会を離れ、自然の中に身を置きたい【2】自然癒やされ型、2拠点目のエリアを故郷と捉え、コミュニティーとの交流を求める【3】ふるさと型、本格移住前のお試しとして2拠点生活を送る【4】プレ移住型、自然の中で子育てしたい【5】のびのび子育て型、都会で培ったスキルを活かし、地域貢献をしたい【6】地域貢献型です。子育て中の20~30代の2拠点生活者は【5】が多く、子育てが一段落し、仲間や地域との交流や趣味を楽しみたいARIA世代の2拠点生活者は、【1】~【3】が多い印象です。

2拠点生活の費用は、移動費が重要なポイントになる。2ページでは月額費用の目安を、多くの事例を元に笠松さんが解説する
2拠点生活の費用は、移動費が重要なポイントになる。2ページでは月額費用の目安を、多くの事例を元に笠松さんが解説する

―― 2拠点目選びで気を付けるべきことはありますか? また、東京・大阪圏の在住者が2拠点生活を送りやすいエリアは?

東京と南房総で2拠点生活を送るIさんの南房総のマンションは、海沿いに立つ。1LDKで44平米、温泉やプール、ジャグジー、サウナの共同設備がある中古マンションを480万円で購入した。東京駅からは、車でも電車でも100分程度のこのエリアが人気を集める理由とは?
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