働き方も生き方も多様な時代、結婚する・しないも、結婚するタイミングも人それぞれ。そうした中で最近目立ってきた選択の一つが、自分ひとりでも人生のかじ取りが十分できる年齢になってからの結婚です。出会いは? 決断の決め手は? 自立した大人同士ならではのよさや大変さは? 気になるあれこれを、45歳以降に結婚した人たちに聞いてみました。

 読者の皆さんのリアルな大人婚事情を知るべく、ARIAでは「45歳以降に結婚した人」を対象としたアンケートを実施。その中から3人の体験談を紹介します。結婚に至るまでには三者三様のドラマがある一方、アラフィフ世代から築く夫婦関係には「ほどよい距離感」という共通のキーワードも見えてきました。

結婚を諦めていた43歳、意外な相手と付き合うことに

Q.結婚の経緯は?

 夫も私も新卒入職以来の市役所勤務。狭い職場なので、以前からお互い存在は認識していました。思い返すと20代の頃に一度、一緒の飲み会にも参加したような……。でもそれっきり接点はないまま、43歳のときに彼が上司として所属部署に異動してきました。ちょうど、私が結婚を諦めていた頃です。

 35歳くらいから本格的に婚活を始めたのですが、なかなか相手が見つからなかった。39歳のときには夜間の大学院で知り合った11歳年下の人と付き合ったのですが、「僕は絶対子どもが欲しい、でもあなたは産めないでしょう」みたいなことを暗に言われて、結婚間際で破局。不妊治療が保険適用されると決まった上限年齢(42歳)を過ぎたときに、婚活は一旦いいかなと思いました。

 単なる「上司と部下」の関係が変化したのは……部署内で暑気払いをすることになったときに、私だけ用事があって行けなかったんですね。そうしたら後日、夫が飲みに誘ってくれました。

 そのときの夫は、職場で見るおとなしそうな印象とはだいぶ違いました。意外と自分の素を見せてよくしゃべる人で、楽しい時間だった。それからまた誘われて何回か飲みに行くうちに、自然に付き合い始めました。同じ部署の課長と係長ですから、職場では絶対にバレるわけにはいきません。仲のいい人にも一切言いませんでしたし、2人でいるところを目撃されないよう、とにかく気を使いました。

 夫は結婚に対してはどちらでもいいやというスタンスだったようですが、付き合って別れるようなことがあったとき、周りに知れたら私のダメージが大きいと思ったので、初めに「結婚前提じゃなければ付き合いません」と言いました。結局、夫と一緒の部署だったのは1年ほどで、私が別の課へ異動になり、交際1年半で結婚。職場に報告したときはいろんな人に「令和始まって以来の驚きだ」と言われました(笑)。

課長と係長の交際は、「職場には絶対バレないように」とにかく気を使った(写真はイメージ)
課長と係長の交際は、「職場には絶対バレないように」とにかく気を使った(写真はイメージ)

夫婦というより同居人? だからこそうまくやっていける

Q.45歳からの結婚だからこそよかったと思うことは?

 子どもを産むことを周囲に期待されないことでしょうか。私自身、子どもが欲しい気持ちは42歳を境に途切れた感じで、夫と結婚前に不妊治療をするかどうか話し合ったときにも、「無理しなくていいよ」と言われました。

 夫は地主の次男で、割と親戚付き合いが濃厚な一族なのですが、結婚したときには義父は既に他界し、新型コロナウイルス禍もあって年末年始に親族が集まったりすることはなくなっていました。もっと若いうちに出会って結婚していたら、かなり面倒だったかもしれません。

 夫との関係は同居人っぽい感じです。就寝時間が全然違うので、寝室は別々。夫は夜10時に寝て朝4時に起き、家事をやってくれます。私は39歳まで実家暮らしでしたが、夫は20年近く一人暮らしをしているので、何でもできる。生活習慣でいえば、彼はネギとタマネギが食べられないことが致命的に困っちゃうんですけど、それもあって食べたいものを各自作って好きなときに食べていますね。

Q.45歳からの結婚だからこそ気を付けていることは?

 週1回は一緒に外食すると決めていますが、後は休みの日も含めてそれぞれ自由に過ごしています。お互いが暮らしたいように暮らしているからこそ、別れないで済んでいるのかも。ここが散らかっているなとか、生活していて気になるポイントも違いますが、指摘せずに気づいたほうがそっとやります。

 というか、家事に関しては私がちょっと夫に甘えすぎている自覚はあります。結婚当初、私が残業が多くてすごく忙しかったので、家事全般をほぼ夫がやってくれて、そのまま今に至っている感じで……。もはやお母さんに甘えているダメ娘みたいな状態。結婚して発見した自分の新たな一面は、やってくれる人がいると私はここまでやらない人間なんだということです(笑)。

Q.45歳からの結婚だからこその心配事は?

 お墓のことと財産管理。私も夫もきょうだいはいますが、子どもは誰もいないので、いずれ私たちの代で墓じまいを考えなくてはいけません。夫のほうは相続が発生したときに手続きがいろいろ大変そうで、それも気になっています。財産を継がせる子どももいないですし、私としては穏便に済めばいいなということだけですね。

次のページからは、こちらの2人のケースを紹介します
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