働き方も生き方も多様な時代、結婚する・しないも、結婚するタイミングも人それぞれ。そうした中で最近目立ってきた選択の一つが、自分ひとりでも人生のかじ取りが十分できる年齢になってからの結婚です。出会いは? 決断の決め手は? 自立した大人同士ならではのよさや大変さは? 気になるあれこれを、45歳以降に結婚した人たちに聞いてみました。

 リビングの結婚写真の隣には、ふたりが穏やかにほほ笑み合う、もう一枚のウエディング写真がある。「結婚10周年だった昨年、思い立ってフォトスタジオで撮りました」と話すのは、数々のスタートアップの社外取締役を務め、人材育成事業なども手掛ける勝屋久さん(60歳)。その隣にいるのは、夫の仕事のサポートに加え、個人へのメンタリングを行う妻の祐子さん(50歳)。49歳と40歳で結ばれた大人婚カップルだ。互いを「祐ちゃん」「ちゃーちゃん(久さんの幼い頃の呼び名)」と呼び合い、「掛け替えのない存在」と認め合うふたり。さまざまな事情から、結婚して夫婦となるまでには10年の歳月が必要だった。

結婚10周年だった昨年、フォトスタジオで記念撮影をした。「祐ちゃんが提案してくれたんです」
結婚10周年だった昨年、フォトスタジオで記念撮影をした。「祐ちゃんが提案してくれたんです」

「もう一度会いたい」が積み重なり、気づけば大事な人に

 出会いは、久さんがIBMのベンチャーキャピタル部門、祐子さんが医療系の企業に務めていた約20年前のこと。友人と連れ立って訪れた店で偶然知り合い、意気投合。自宅方向が一緒で、タクシーに相乗りして帰ったのがきっかけだった。

 「紳士的で楽しい人、が第一印象」と祐子さん。ただ「『明日は子どもの弁当を作らないと』との彼の言葉に『あ、そうなんだ』と」

 当時、久さんは大学の同級生だった前妻、小学生の息子と暮らす既婚者。「私は30歳目前で結婚願望が強かった。家庭があると知った時点で『対象外』と思いました」(祐子さん)

 対する久さんの祐子さんの印象は「なんてすてきな女性」。「『もう一度会いたい』と会うたびに思い、気持ちがぐんぐん傾いていきました」

勝屋 久/勝屋久事務所代表・画家
勝屋 久/勝屋久事務所代表・画家
1962年、東京生まれ。上智大学理工学部数学科卒業後、日本IBMにて25年間勤務。IBM Venture Capital Group パートナー日本代表、経済産業省IPA(情報処理推進機構)未踏IT人材発掘・育成事業プロジェクトマネージャーなどを経て、2010年8月、リストラを機に独立。マクアケ社外取締役、アカツキ社外取締役、ビジネス・ブレークスルー大学客員教授などを務めるほか、地域活性化にも尽力する。著書に『人生の目的の見つけ方 自分と真剣に向き合って学んだ「倖せの法則」』(KADOKAWA)

 人前ではとびきり明るくふるまいつつ、「本来の僕はどちらかというとおとなしいのかも」と久さん。「若く優秀な起業家と仕事すると、その瞬間は高揚するけれど、キラキラぶりに当てられ、『俺なんて』と落ち込む。家では勝手に家族サービスして疲れ果てる。でも当時、祐ちゃんの前では無理に自分を飾らず、安らげたんです