バブル崩壊後の不況期に社会に出る運命にあったがゆえに、就職難に見舞われた氷河期世代。40代の多くの方は、少なからず氷河期に辛酸をなめた経験があるはずです。氷河期はなぜ生まれたのか、氷河期世代を取り巻く環境の変化、さらにはウィズコロナの時代にこの世代がどうなっていくかを考察。「氷河期の壁」を乗り越え、苦難を成長の源泉に変えた女性たちのレジリエンスにも迫ります。

 氷河期世代は、経済、社会の変化の荒波に翻弄された不遇の世代であることは、間違いありません。しかし、「氷河期世代だから不幸」とひとくくりにするのは間違いです。氷河期世代の実際像とはどのようなものか、自分の求めるような働き方ができて、幸福感を得るために何をすればいいのかについて、リクルートジョブズ ジョブズリサーチセンター長の宇佐川邦子さんに話を聞きました。

大企業の新卒採用数の激減が生んだ悲劇

―― 氷河期世代と、ほかの世代の人たちで大きく違った点は何だったのでしょうか。

宇佐川邦子さん(以下、敬称略) なんとなく、氷河期世代=経済の波にのまれたかわいそうな人、というイメージが強いと思いますが、成功者も多く輩出しているし、他の世代と比べて、悲観的な人の割合がものすごく多いわけでもありません。その点は注意が必要です。団塊ジュニアを含む人数の多い世代なので、社会問題として注目されやすいという側面もあるのです。

 では氷河期世代とほかの年代で何が違ったかというと、1つは「大企業の新卒採用の数が急速に減った」ことです。

 特に氷河期世代の初期は影響が大きかった。ただ、学生たちもだんだん分かってきて、大企業と中小企業の併願をするようになり、3年以内に就職して正社員の経験をしている人も多いです。

 2つ目の違いは、中小企業に就職した人が多かったために生じた違いです。分かりやすいのが、初めて就いた仕事の3年以内の離職率。1000人以上の大企業だと25%、それより小さい規模の企業では3割を越えてきます。最初の3年間は初めて社会に出て働いた人が「思った仕事と違う」「思ったより仕事が厳しい」など、想像と現実のギャップに悩む時期です。

 ではなぜ中小企業の離職率が高いかというと、「思った仕事と違う」「職場の人と合わない」となったときに社内での職種転換が難しいからです。この点では圧倒的に大企業が有利。入社のときに職種が曖昧なこともあり「営業に向いてないなら企画やるか?」「部長と合わないなら別の部署へ」と、大企業は職場のバリエーションが多く配置転換しやすいのです。

 日本人の特徴として、離職の理由の上位に人間関係への不満が入ります。これが中小企業だと、人間関係が悪くなっても顔を合わせるから居心地が悪い。経営者との距離も近いので、いいときはいいけれど、関係が悪くなると厳しくなるのです。

 氷河期世代がほかの世代と違う点の3つ目はどの企業も採用数を絞ったため同期が少ないことです。入社してしばらくはいろんなことにぶつかって自信を失うもの。そんなとき同期がいれば「私も同じことあったよ」と励ましてくれたり、1つ上の先輩が「もうすぐ慣れるよ」と言ってくれたりします。でも、4年に1回くらいしか新卒を採らない職場だと、相談する相手がいなくて、どんどん萎縮してしまいがちです。

 この3つが、氷河期世代がほかの世代よりきつかったポイントです。