2040年には一人暮らしが世帯全体の4割を占めると推測されている長寿国・日本。未婚、既婚に関わらず、いずれは誰もが「おひとりさま」になる可能性があります。ひとりで生きていけるようになることは、老後に備えるだけでなく、今の生活にも新たな視点や行動の広がりをもたらすはず。「ソロ活」を実践している人や識者のお話から、ひとりを楽しみ、ひとりで歩く未来をポジティブに迎えるためのヒントを探ります。

 生涯非婚率は年々上昇し、結婚している夫婦の3組に1組は離婚する時代。家族がいても子どもは巣立ち、さらに長生きすればパートナーと死別します。いつかはみんながおひとりさまになるのなら、今からしっかり準備して、その未来をワクワクして迎えたい。社会学者の上野千鶴子さんに、ひとりの人生を楽しむ極意を聞きました。

ひとりの生活を充実させる「おひとりさま資源」とは

 「選んでおひとりさま」か「余儀なくおひとりさま」かの違いで、いつかは多くの人がひとりになるものです。

 ひとりの生活を送る上で重要なのは、「おひとりさま資源」があるかどうか。おひとりさま資源とは住まい、年金、医療保険、介護保険。これが基本です。

 一番大きな資源は住まいです。ついの住み家なんて言いますが、今は一度家を建てたらずっとそこに住むというより、住み替えが主流。賃貸の場合、日本の法律は家主を守る方向で整備されているので、高齢者は不利になってきます。ですから、誰からも出ていけと言われない住まいを確保すること。コンパクトで住みやすくてロケーションがいい。この3条件がそろっているといいですね。

 2020年に評論家の樋口恵子さんと『人生のやめどき』という書籍で対談しました。その中で樋口さんが話しているのですが、彼女は都内の閑静な住宅地に一戸建てを改築してお住まいです。駅まで徒歩8分。タクシーを使うには近すぎるけど、88歳という彼女の年齢では休憩しないで歩くにはしんどい距離だと言います。

 元気なときは、駅から8分は健康のために歩くにちょうどいいと思っていたそうですが、今はそれがつらい。若いうちは実感できないでしょ。

 これまでに私は何度も引っ越しました。3階建ての大きな家に住んでいたこともありますが、3階は使わなくなり、ずっと2階で生活していました。だからあるとき思ったんです。「マンションでいいんじゃない?」と。もう二度と階段のある家には住みたくありません。

 今は駅から2分のマンションに住んでいます。本当に楽ですよ。食事を作るのがしんどいときは、エレベーターを下りれば目の前にレストランがありますからね。

 戸建てはゴミ出しの負担が大きいですが、うちのマンションは24時間ゴミ出しOK。私のように外出が多い人はひとりだと宅配便を受け取るのも大変ですが、マンションの宅配ボックスならいつでも受け取れます。