2040年には一人暮らしが世帯全体の4割を占めると推測されている長寿国・日本。未婚、既婚に関わらず、いずれは誰もが「おひとりさま」になる可能性があります。ひとりで生きていけるようになることは、老後に備えるだけでなく、今の生活にも新たな視点や行動の広がりをもたらすはず。「ソロ活」を実践している人や識者のお話から、ひとりを楽しみ、ひとりで歩く未来をポジティブに迎えるためのヒントを探ります。

 ランチやお茶、美術館や映画鑑賞など、ちょっとした時間をひとりで過ごすことはベテラン社会人のARIA世代なら日常茶飯事。その一方で「ひとり焼き肉」のように、人によってはひとりで楽しむことをちゅうちょしてしまうことってないでしょうか。やりたいことがあるのに、自分で制限するなんてもったいない! ドラマ化でも話題の本『ソロ活女子のススメ』の著者、朝井麻由美さんに、ソロ活の醍醐味と、ARIA世代にもお薦めの「ひとりだからこその発見や楽しさがある」スポットを教えてもらいました。

思い込みを解いた、大学時代の「ひとりラーメン」

編集部(以下、略) 朝井さんがソロ活に目覚めたきっかけを教えてください。

朝井麻由美さん(以下、敬称略) ひとりっ子なのもあり、ひとりで過ごす時間自体は長かったんですよね。だから、何か大きなきっかけがあって目覚めたというよりも、子どもの頃からひとりでいることが自然で、特別なことでもなく、楽しかった。放課後はひとりで近所の公園の地面にチョークで絵を描いたり、木登りしたりしていました。

 逆に、集団に自然となじむことは苦手だと自覚していて、高校までは周りから浮かないようにと常に気を張っていたんですね。それが大学生になってクラス単位での行動が減り、「いつもみんなと一緒」から解放されて、「ああ、今までなんてしんどかったんだろう」と初めて気づきました。

―― じゃあ、そこからは基本的に何でもひとりでやるように?

朝井 いえ、そこはそういうわけでもないんです。ひとり行動が好きな私にも、当初はやっぱり「これはひとりですることじゃない」と思い込んでいることはありました。今でもよく覚えているのが「ひとりラーメン」。15年くらい前だと、女性がひとりでラーメンを食べに行くって、けっこうびっくりされる感じで。

 でもラーメンって無性に食べたくなりますよね。そういうときに私はいちいち友達を誘っていたのですが、あるとき同じ学科の女の子が「私、食べたいと思ったらひとりで行っちゃうよ」って言っていて、はっとなったんです。実際にひとりで行ってみたら「なんだ、全然平気じゃん」という感じで、目からうろこの出来事でした。

 ソロ活全般に言えることなのですが、大変なのはたいてい「入り口」。そこさえ乗り越えれば、「なんで私はあんなに緊張していたんだろう」って不思議なくらいで。

 私はソロ活には精神的ハードルと物理的ハードルがあるとよくお話しするんです。

「ひとりバーベキュー」をやったときの朝井さん。たいていのことはひとりで楽しめる朝井さんですが、こちらは物理的ハードルの高さを思い知らされた経験だったそうです…
「ひとりバーベキュー」をやったときの朝井さん。たいていのことはひとりで楽しめる朝井さんですが、こちらは物理的ハードルの高さを思い知らされた経験だったそうです…