多くの管理職が悩んでいる「部下のモチベーション管理」。人なし、金なし、時間なしの企業では、今いるチームのメンバーに最大限力を発揮してもらうことが、様々なプロジェクトを完遂するために不可欠です。「モチベーションって何? 向上させるためには管理職は何をすればいいの?」という疑問を専門家にぶつけたほか、モチベーションアップがうまいマネジャー「モチベ先生」たちの極意をお伝えします。

 アパレルブランドギャップジャパンの人事本部長、人材サービス会社ランスタッドの取締役・最高人材開発責任者(CPO)など、グローバル企業で活躍してきた「人事のプロフェッショナル」志水静香さん。2018年には自ら会社を立ち上げ、大学やベンチャー企業などで組織開発・人材育成のアドバイザーとして活躍している。

 17年間勤めたギャップジャパンでは、従来の人事評価(レイティング)を廃止する「ノーレイティング」や、上司と部下の日常的な対話を促す「1on1(ワンオンワン)」など、国内外の先進企業が注目する人事制度をいち早く確立。ビジネス環境が急変する時代に、社員のモチベーションを引き出しながら会社の目標達成と成長に貢献してきた。

 そんな志水さんの周りには、会社を変えたいという意欲を持った次世代のリーダーはもちろん、キャリア相談に訪れる後輩の姿も絶えない。人事のプロがモチベーションアップ効果を実感した、先進的なマネジメント策とはどんなもの? 上手に取り入れるコツとは? 人事としての視点、さらに一人の管理職としての視点から、その秘訣を聞いた。

今、先進企業の人事が注目するモチベアップ策とは?

―― ここ数年、国内外の先進企業では、従来の人事評価であるレイティングを廃止する「ノーレイティング」など、新しい人事マネジメント策が注目されていると聞きました。具体的にどんな内容で、なぜこうした策が必要となってきたのでしょうか?

志水静香さん(以下、敬称略) 2012年ごろに米国の西海岸に本拠地を置く先進的な企業が、優秀な人材を確保し、活躍してもらうために新しい人事マネジメントの手法を次々とを導入し始めました。従来の年次評価ではなく、上司と部下による質の高い対話を通して「社員の成長を支援することが、会社の成長につながる」という考え方から新しい「パフォーマンス・マネジメント」あるいは「パフォーマンス・ディベロップメント」と呼ばれています。

志水静香さん
志水静香さん
大学卒業後、日系IT企業に入社。外資系IT、自動車メーカーなどを経て1999 年ギャップジャパンに入社、人事本部長として人事制度を確立。2013年、法政大学大学院政策創造研究科修士課程修了、最優秀論文賞受賞。2017年ランスタッド入社、取締役・最高人材開発責任者(CPO)を務めた後、2018年ファンリーシュ (Funleash)設立。現在、大学やNPO、ベンチャー企業などの機関で組織開発・人材育成の顧問・アドバイザーとして活動中。共著に『キャリアマネジメントの未来図』(八千代出版)、ほか翻訳も多数。

志水 その代表的な例が、社員を評価してランク付けを廃止する「ノーレイティング」。人材のランク付けをなくす代わりに、上司と部下の日常の対話を通して成長を支援する点が特徴です。こうした新しいモチベーションアップ策が登場した背景は、大きく3つあると考えています。

―― パフォーマンス・マネジメントを実現するためのノーレイティングに代表されるような、新しいモチベーションアップ策が必要になった3つの背景とは何でしょうか?

新しいモチベーションアップ策が必要になったのはなぜ? 次ぺージで解説する
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新しい人事制度を知るための5つのキーワード。3つ目以降は次ページで解説する
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