「目がかすむ」「眠れない」「疲れやすい」。40代、50代はいろいろな不調が起きやすい年頃です。忙しくてつい後回しになりがちですが、これからも長く付き合うこのからだ。少しお金をかけてでもメンテナンスを始めるタイミングかもしれません。人生100年時代、健康は大切な資産の一つ。パーツごとにケアの方法やかかりやすい病気を専門家に聞きました。

 40~50代になると、脚力の衰えを感じたり、膝に痛みが出てきたりする人も増えてきます。人生100年時代といわれていますが、このまま過ごしていて最期まで自分の脚で歩くことはできるのでしょうか? 「何もしないでいると、40代以降は年間で1パーセントずつ筋肉が減っていく」と話すのは、立命館大学スポーツ健康科学部の藤田聡教授。筋肉を維持していくことの必要性や効率的な食べ方について聞きました。記事後半は、フィットネストレーナーの森拓郎さんが提案する、今から取り組むべき日々のトレーニングについて。動画で解説します。

筋肉量が多い人ほどシワが少ない

 加齢によって筋肉が減っていくことは想定の範囲内だとしても、それに伴う悪影響についてはあまり知られていないかもしれません。高齢者の健康指導も行う藤田さんは、高齢者の筋力低下についてさまざまなリスクを指摘します。

 「高齢者の筋力不足による弊害の報告として一番多いのは、病気やケガで入院したときの回復力です。筋肉量の多い人ほど、早く元気に退院できることが分かっています。病気やケガの修復に必要なたんぱく質は、筋肉から出てくるアミノ酸によって作られますが、筋肉が少ないと修復時に供給できるアミノ酸の量が少なくなるからです。

 また、筋肉量が少ないと糖尿病のリスクを上げるということも分かっています。食後の糖質の8〜9割は筋肉でグリコーゲンとして蓄えられますが、筋肉というためられる場所がないと、肝臓で脂質に変換されたり、血中の中性脂肪値、コレステロール値が上がったりすることがあるためです。

 ほかにも、筋肉量が少ない高齢者ほど認知機能の低下の度合いが大きかったり、心疾患のリスクが高くなったりするなど、さまざまな影響があることが分かっています。『筋肉量が多い人ほどシワが少ない』という美容面でもメリットがあるというデータもあります」

 病気を予防し、病気になったとしてもその後の回復を早め、さらには若々しくいられるという、人生100年時代の健康維持には欠かせない筋肉。40〜50代の今、私たちが筋肉量を保ち、また増やしていくにはどうすればいいのでしょうか。