「目がかすむ」「眠れない」「疲れやすい」。40代、50代はいろいろな不調が起きやすい年頃です。忙しくてつい後回しになりがちですが、これからも長く付き合うこのからだ。少しお金をかけてでもメンテナンスを始めるタイミングかもしれません。人生100年時代、健康は大切な資産の一つ。パーツごとにケアの方法やかかりやすい病気を専門家に聞きました。

 健康な体を維持するために、しっかりかめる健康な歯を保つことが大切。虫歯にならないようにするのはもちろんだが、40代以降に気を付けなければならないのは歯周病。歯周病は全身の病気にも影響を与えるといわれているが、どういうことなのか。歯周病を予防するためにどんなセルフケアが必要か、歯科でのメンテナンスはどんなタイミングがいいのか。歯周病のエキスパートである東京国際クリニック 歯科院長 清水智幸さんに詳しく解説してもらった。

全身の疾患にも影響を与える歯周病

編集部(以下、略) 40歳以降は全身の健康のためにも歯周病のケアが大事だといわれる理由は何ですか?

清水智幸さん(以下、清水) 40歳以降になると、歯を失う原因の割合が虫歯から歯周病に逆転してきます。免疫のメカニズムを考えると、加齢とともに免疫力は下がりますし、仕事の面では管理職に就いて忙しくなる人も多く、会食の機会も増え歯磨きのタイミングを逃すなど歯周病になりやすい条件が増えることが考えられます。

 歯がなくなれば栄養摂取に不利であることは明らかですよね。近年、歯周病菌が体内に侵入することによる全身疾患との関連が明かになっていますが、センセーショナルに捉えられ過ぎているところがあって、歯周病を治せばすべて健康になるようにいわれるのは極端な話です。心臓病や糖尿病など生活習慣病は多因子による病気なので、そのリスクの中の1つが歯周病だということです。

 中でも糖尿病については相互に関係があることが分かっています。歯周病があると血糖値のコントロールがしづらくなり、糖尿病が管理されないと歯周病が悪化します。

 歯周病は慢性の炎症性の病気です。糖尿病も炎症性の病気。炎症の原因となる「起炎物質」が共通しているんです。歯周病によって起炎物質が増えると血糖値のコントロールが難しくなる。歯周病を治療することで起炎物質が遮断されて血糖値のコントロールがしやすくなる。逆もまたしかり。

 健康な歯と歯茎の間の隙間、歯肉溝には上皮があります。これは神様がくれた天然のよろいです。皮があるので細菌は体内に入ることができません。しかし歯周病になり歯肉溝が歯周ポケットになると皮が潰瘍形成を起こしてところどころ穴が空くような状態になるんです。歯周ポケットの中には細菌の塊である歯垢(しこう)が詰まっていて、その穴から細菌が体内に侵入します。

 そうなると動脈硬化を起こしやすくなり、動脈硬化を起こすと高血圧になり、高血圧になると虚血性心疾患になる。このようにさまざまな疾患を起こす要因になり得るんです。

歯周病の進行段階と各段階の症状
歯周病の進行段階と各段階の症状