将来に備えて「稼ぐ」「貯める」も必要ですが、ときには思い切って「使う」ことで人生が味わい深いものになることも。趣味に、移住に、推し活にと、ARIA世代らしく人生を謳歌する女性たちは、収支のバランスをどう考えながら、何にお金を投入しているのでしょうか。人生を豊かにする「楽しいお金の使い方」を探ってみました。

 ARIA世代の「楽しいお金の使い方」、後半も読者の皆さんから寄せられたディープなエピソードを紹介します。東京在住の自営業、池内さん(仮名、40歳)が教えてくれたお金の使い道は、卵子凍結。始まりは楽しいという感情とはほど遠いものだったといいます。

 「39歳のときに1年半付き合っていた年下の彼に振られてしまいました。私としてはずっと一緒にいるのかなと思える相手で、彼の子どもも望んでいた。でも彼にとってはまだ結婚のタイミングではなかったんです。

 次にまた誰かと付き合ったとしても、すぐに妊活というわけにはいかない。そんなことを考えていたら、『とりあえず卵子凍結をしよう』という発想が頭に浮かんだんです。旅行はいつでも行ける、私が今やるべきことは卵子凍結だよね、と

 さっそく情報収集を開始し、彼との別れから4カ月後にはクリニックを訪れていた池内さん。3回の採卵で、合計13個の卵子を凍結することができました。費用は120万円。今後、保管には1年あたり約20万円かかるということでした。

「私は未来の自分と対話している」と気持ちが前向きに

 「初めは卵子凍結についてそこまで深く考えていませんでしたが、実際にやってみるうちに、自分がこれからどう生きたいかという問題に向き合うようになっていったんです。3回目の採卵をする頃には、振られたショックや結婚への焦りは消えて、『これから先に好きな人が現れたとき、未来の自分に選択肢を多く残したい。私は未来の自分と対話して、これをやると決めたんだ』という前向きな気持ちになっていました。

 これまで一生懸命働いてきたお金で、今やれること、やりたいと思ったことを実行できる自分がうれしかった。卵子凍結という行為を通して、自分の人生についてそれまでになくいろんなことを考えられたのは思いがけない収穫でした」