将来に備えて「稼ぐ」「貯める」も必要ですが、ときには思い切って「使う」ことで人生が味わい深いものになることも。趣味に、移住に、推し活にと、ARIA世代らしく人生を謳歌する女性たちは、収支のバランスをどう考えながら、何にお金を投入しているのでしょうか。人生を豊かにする「楽しいお金の使い方」を探ってみました。

 山口県柳井市は、江戸時代から瀬戸内海で有数の商港として栄えた美しい街。穏やかな気候と静かな海は地中海を思わせる。東京から2019年9月にこの地に移住した岩崎喜美弥さん、一徳さん夫妻は、築150年の古民家とそこからの眺望に一目ぼれして購入を即決したのだという。1年以上かけて自分たちで家や庭をリフォームして手に入れた理想の暮らしとはどのようなものなのだろうか。妻の喜美弥さん(59)に詳しく聞いた。

自らパワーショベルを操作して手を入れた庭を案内してくれる岩崎喜美弥さん
自らパワーショベルを操作して手を入れた庭を案内してくれる岩崎喜美弥さん

移住先探しの旅の末に出合った理想の古民家

編集部(以下、略) 古民家を購入して移住したのには、何かきっかけがあったのですか?

岩崎喜美弥さん(以下、岩崎) 私は長い間東京で会社勤めをしていたのですが、やりたいこともあって早期退職しました。娘が大学進学で東京を離れましたし、夫は貿易関係の仕事で海外が多いですし、東京で暮らし続ける必要が特になくなりました。

 以前訪れたトルコのアンタルヤというエーゲ海に面した都市が好きで、憧れもあったのですが、治安や食文化のことを考えるとトルコより日本で暮らすのがいいなと思って本格的に移住先を探し始めました。

 ガーデニングが好きで、東京ではマンションのベランダでハーブやオリーブを育てたりしていたので、庭のある家がいい、自然の多い場所がいいなと考えていました。

―― 現在の山口県柳井市の物件にたどり着くまで、あちこち探したのですか?

岩崎 はい、まずは、東京で行われていた「移住フェア」のようなイベントで情報収集することから始めました。私は寒いのが苦手で、東京より暖かくて自然豊かで海の近くを希望していたので、奄美大島、石垣島、沖縄を見て回ったのですが、現地に行ってみて島での暮らしは難しいと思ったので、兵庫県から西の方面へ、2週間くらいかけて車で移住先を探す旅に出たんです。

 空き家バンクで情報を探すのですが、図面で見ていいと思った物件でも、現地に行ってみると災害のリスクが心配な場所もあり、なかなか決まらない。諦めかけたときにこの家にたどり着き、来てみたら素晴らしい場所だったので即決しました。